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真撰組の隊服を1回で良いから着てみたいと思っていた。
(今なら着れるかも…!)
ゴクリと喉を鳴らし、沖田の隊服を見上げた。
(( かっこよく見えて ))
数十分前。
彼女はまた彼のところへ遊びにきて彼と話していた。しかし彼は今いない。風呂へ入ってくると、つい先程部屋を出ていったのだ。1人になってぼーっと部屋を眺めてみれば、ふと視線の先にハンガーに掛かった隊服を見つけた。
「あ、」
いつも着てみたいと思っていたそれ。彼が毎日着ていて、とてもかっこよく見えてしまう。
そして、冒頭に戻るのだ。
「ちょっとくらいなら…」
彼は今風呂へ行ったばかりなので、戻ってくるまでまだ時間があるはずだ。彼女は恐る恐る隊服へ手を伸ばすとハンガーから取った。
着てみるとぶかぶかだった。
「なんか悔しいほどに手足長いし…」
全体的に合っていないので彼女が着るととても格好が悪い。しかし、彼の匂いがついたその服は、まるで彼に包まれているようで幸せになる。袖口を鼻へ持っていき、また息を吸ってみる。いつも土方に悪戯をしようとバズーカを使っているせいか、少しだけ火薬の香りもする。
「総ちゃんっぽいなぁ…」
思わず笑ってしまい、それからも1人で幸せな気持ちに浸っていた。…そう、時間も忘れて。
彼が帰ってきたのは、その10分後。部屋に入ってきて、お互いに固まった。
「…何やってるんでィ?」
「え、」
最初に口を開いたのは彼だが、彼女は答えることもできない。
「いや、あの、」
頭の中で言い訳を考えるのだが良いものが浮かばない。チロチロと視線を泳がせると、彼は彼女に近付いてくる。ぐいっと腕を引っ張られ、彼の方を向かされた。
「何やってるんでィ?」
「っ、あの…」
もう1度聞かれると、彼女は羞恥心で泣きそうになった。
(こんなの、ただの変態じゃん…っ)
「ごめんね、総ちゃん!」
「だから、何で着てるんだって聞いてるんですぜィ」
「え、あ…」
赤くなった顔を隠すように下を向いていたのに、顎を掴んで上を向かされたために丸見えになってしまった。
「総ちゃんが、いつも着てるから…」
「だから?」
「かっこよくて…着てみたいなぁって」
「………」
「ごめんね総ちゃん!しかも私が着ても全然かっこよくないしね!」
そう言うとため息をつかれる。
(やっぱり引かれたのかな…)
不安になった瞬間に、背中に腕を回された。
「そんなことねェ、似合ってますぜィ」
自分ではそうは思わないが、彼がそう言うから思わず赤面してしまう。そんなことないよ、と言おうとすると、彼が腕の力を強めたので言えなくなった。苦しいくらいに抱き締められて、そして耳元でボソリと呟かれる。
「あんまり可愛いこと、しないで下せェ…」
「…!」
そして彼女が何かを言う前に、その唇を塞ぐ。ゆっくり挟み込むように、唇を食べられている感覚。
「んむ…、ん、」
彼女の甘ったるい声を聴きながら、彼はふと、目を細く開けて彼女の姿を盗み見た。
(やべぇなァ…)
スッと頬を親指でなぞると、また少し声を漏らす。
(コスプレとか、くだらないと思ってたのによォ…)
END
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キリ番リク下さった癒嘉様、ありがとうございます!今回はまた前回同様グダグダとしましたが、甘くというのは達成できたかな…(できてたら良いのですが)と思います。これからも頑張っていくので、よろしくお願いします。
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