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彼は今日機嫌が良い。別にニコニコしているわけでもなく、鼻歌を歌っているわけでもないのだが、雰囲気で分かる。例えば、ちょっとしたことなのだが、彼女の頭を撫でてみたり、スクアーロを怒鳴らなかったり。ただそれだけなのだが、珍しいほどにとても機嫌が良いのだ。
そんな中、彼女はあることを考えていた。
(このままこの機嫌を保ったら、今夜はシなくて良いんじゃ…?)
ここ連日、彼に半強制的に抱かれていて、彼女はズキズキと痛む腰を押さえながら彼を恨めしそうに見た。
(今日は絶対ザンザスのご機嫌とっといて早めに寝ちゃおう…!)
―そんな企みの中、ふと彼女は思い立った。
(早めに寝るんだから、お風呂入っちゃおー)
まだデスクにいる彼を置き去りにしてバスルームへ向かおうとすれば、それに気付いたのか、すかさず呼び止められる。
「おい、どこ行くんだ?」
「え?お風呂」
「…俺も行く」
「…?じゃあ先どーぞ?」
「テメェも入れ」
「…は…?」
(何を言い出すの、このお方は…?)
驚きすぎて、全ての動きがフリーズした。あのザンザスが、一緒にお風呂入ろう、だなんて。(命令形だが)
「やだ、入らないよ」
「ハッ、テメェに拒否権はねぇよ」
(なんて無茶苦茶な)
ポカン、と口を開けてしまった彼女に近付き、彼は彼女の腕を掴んだ。
「ちょ、ちょっと待って?!一緒にとか、無理無理無理…っ」
「何訳分かんねぇこと言ってやがる」
「聞いてよー?!!」
多少抵抗をしていると、彼は彼女をひょい、と持ち上げ、肩の上に担ぎあげてそのままバスルームへと向かった。
(( 今日の夜も ))
「きゃー高ぁい…って、違うし!おろしてよ、やだやだあぁっ!」
しかしあっという間に到着してしまい、彼女はぶすっとした顔で降ろされた。
「絶対やだかんね」
「理由は」
「……恥ずかしいし、」
「くだらねぇ」
まだ言い終わる前に鼻で笑われる。何なのこの仕打ちは、と彼女は思ったが、折角ここまできて、彼の機嫌を損ねるわけにはいかない。そう言っている間に、彼はもうシャツのボタンを外している。
「テメェも早く脱げ。…それとも脱がされてぇのか?」
ニヤリと笑った彼に嫌な予感がして、彼女はブンブンと首を振った。
「じゃあ早くしろ」
その一言にさすがに諦めて、彼女は脱ぎはじめた。
「気持ち良いー?」
「…ああ」
シャカシャカと泡を立てながら、彼女は彼の髪を丁寧に洗っていた。前々から彼の髪に触れたいと思っていた彼女は、先程自ら洗いたいと言い出したのだ。今彼は風呂へ入り縁の部分に頭を乗せていて、彼女は風呂の外へ出てそれを洗っている、という状況だ。(勿論タオルはグルグル巻き)
洗い終わって流すと、彼女はやっと中に入ってきた。
「髪さっぱりした?」
「ああ」
「やっぱ綺麗な髪だね」
「知るか」
「あはは、サラサラー」
それから彼の髪を撫でていると、彼は不意にニヤリと笑う。
「そろそろ目が慣れてきたな」
「…!!!」
そう、彼女の激しい希望により、風呂場の電気を消してもらっていたのだ。それなのに、だんだんと周りが見えるようになってきている。彼女は慌てて彼から離れると、反対方向を向いてしまう。
「おい、こっち向け」
「やだやだやだ!絶対無理っ」
「…何今更照れてやがる。いつも見てんじゃねえか」
「〜〜〜〜っ…」
カァァッと顔を赤くして、彼を睨んでみたが、効果はない。それどころか、彼を煽るばかりだった。彼は背を向けている彼女を後ろから抱きしめると、耳に唇をつけて囁いた。
「…どうしてほしい?」
「なっ…!離れてよ!!」
照れ隠しにそう言ってはみるが、耳元で囁かれてゾクゾクしてしまった彼女を彼が見逃すわけがない。
「出たら覚悟できてんだろうな?」
「え?!」
(シないために機嫌とってたのに…っ)
これ以上の腰痛を持つと想像すると、恐ろしいことになる。たださっきからやわやわと胸を揉まれていて、反応せずにはいられない。
「んっ、分かった、からぁ…っ!」
「ハッ、上出来だ」
彼女の一言に満足気に笑ってから、彼は手を離した。翌日身体が痛くなっているのは自分なのに、それを許してしまう彼女は、とことん彼に甘いのかもしれない。
END
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らいたんへの捧げ物。
書いたけどね、色々とごめんなさい。こんな駄文乱文申し訳ないです…らいたんみたいにすばらしく書けないです(笑)
甘めにってリクだったけど甘く書けなくてどうしようかと思いました…でも自分の中では精一杯です。らいたんの文才、分けて下さい(土下座)
これからもお互い頑張りましょう!
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