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最近1つ、邪魔な影。
「師匠ー見て下さいー」
「…おばかですか、貴方は」
幻術で千種に勝手にネコ耳をつけたフランは満足気に骸へ視線を送る。
「えー、でもすごい似合ってませんー?」
「似合ってないよ、早く取って」
千種がイライラと眼鏡を上げるのもまるで無視。骸はため息をついてフランに向き直った。
「良いですか、やるからには本格的に、です。それから僕は犬の方が好きです」
すると、ボフッという音と共に煙が立ち、それが消えると千種の頭にはモフモフとしたワンコ耳がついていた。
「おー…やりますね、師匠」
「当然です。さぁ、やってみなさい」
彼女はただただその光景を眺めるしかない。
(いつもなら2人っきりの時間なのにー…)
そう、フランに幻術を教えるようになってからそれに時間が割かれてしまい、2人っきりになれるのは夜しかないのだ。
(( 2人の時間 ))
今日も長かった。フランがあの調子だから彼もついノッてしまい、ふざけてしまう。
(結局今日はいかにリアルな耳を作るかの練習をしただけじゃん…)
そんなもの、どこで役立つのだと彼女はため息をついた。もう今日は先に寝てしまおうか。そう思ってソファに向かうと。
「名前、もう寝るのですか?」
「え、あぁ、うん」
突然彼に声をかけられる。フランに集中していて彼女のことなど見えていないようだったのに。ちゃんと見てくれていたことが嬉しくて彼女は少しだけ笑って見せる。彼もまたフッと笑ってフランに一言告げた。
「名前が寝るようなので、今日は終わりです」
なんて自分勝手な師匠だ、とフランは口を開けてしまったが、もともと彼の世界は彼女中心に回っていたことを思い出し、頷いて部屋を出ていった。フランが出ていったのを確認すると、彼は彼女に歩み寄り頭を撫でる。
「さぁ、一緒に寝ましょうか」
彼女は何も答えず彼の背中に抱き着いた。やっとこの人を独占できるのだ、と。
「おや?…本当に甘えん坊ですね」
「…甘えてないもん…」
暫くそのまま彼を抱き締めて背中に顔を埋めていたのだが、ふと眠かったことを思い出す。
「…寝る」
「クフフ、良い子はとっくに眠っている時間帯ですからね」
もう1時を指している時計を見て彼は笑った。
(私もう子供じゃないのに…)
何かと子供扱いされてしまうのだが、彼は年下とばかり一緒にいるせいでそうなってしまったのか、とも思いはじめる。ソファに寝転んだ彼女を見て彼はゆっくりその隣へしゃがんだ。
「おやすみなさい、名前」
「うん、おやすみ」
ちゅ、と額にキスを落とされ、寝るまでずっと頭を撫でられる。もう子供じゃないよ、と言いたいが、この時間が結構好きなので結局言えない。彼の手は心地好くて彼女はうとうとと瞼を閉じた。
END
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キリ番リクくださった弥生様、ありがとうございます。要望等が何もなかったので私の勝手な妄想で失礼しました。ですので、暴走しております(笑)前回甘くできなかったのでとびきり甘めにしてみましたがいかがでしょう。今後もよろしくお願いします。
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