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カタカタとキーボードを叩く音がする。デスクに座ってパソコンの画面を見つめる彼の目はどこか真剣で、その横顔とかとても好きだった。
…でも。

(もう何時間放置されてんの、私…!)




(( 仕返しは ))




先週急に新しい仕事が入ったせいか、ボスであるザンザスは勿論ヴァリアー全体で大忙しだ。

(忙しいのは分かる。…分かるけど)

再びチラッと目をやれば少し手を口に当てて何かを考えているご様子。そんな姿も格好良い。でも、もうそんなこと言っていられないほど待たされているのだ。

(ちょっとくらい、話したいよ…)

邪魔になるとは思っていたが、遂に堪え切れずに彼の後ろへ回った。首にゆっくり腕を回して優しく抱き着く。ふと彼がキーボードをうつ手を止めた。

「何だ」

「あ、気にしないで?やっぱり邪魔なら戻るから」

「…フン」

彼は何も言わず足組みを止め、少しだけ椅子を引いた。いつもが膝の上に乗るからだ。

「えっ、良いの?」

「早くしろ」

仕事中なのに、と言おうとすれば遮られ、彼女は慌てて彼の膝の上に乗っかった。同じ向きに座るのではなく彼に横顔を見せるような、いわゆる横座りという座り方だ。すると彼は仕事を再開する。顔も近ければ体もくっついている。

「ザ、ザンザス、何か…」

(これ、抱き合ってるみたいだよ…!)

カァッと顔を赤くすると彼はチラッとこちらへ視線を投げてきた。

「何だ」

「な、何でもない…」

ますます顔を赤くして、それを隠すように彼の胸へ顔を埋めた。そうしてみれば彼の体温や匂いが伝わってきて。

(やっぱこーゆーの好きだなぁ…)

カタカタという音を聞きながら彼女は心地好さに負けて眠ってしまった。





目を醒ますともうパソコンが閉じてあった。

「ん…?」

外はもう暗い。

(あれ、私、どんだけ寝てたの…)

顔を上げると突然至近距離に彼の顔。

「ッ?!」

びっくりして離れようとすれば彼の膝の上から落ちそうになる。

(そっか、乗ってたんだ…!)

だんだん落ち着いてきた彼女を見て彼は彼女の頭を掴んでそっとキスをした。

「目ぇ醒めたか」

「う、うん…っ」

「なら、そろそろ退け」

「はい…」

ぴょん、と飛び降りると彼も続いて立ち上がる。軽い伸びをしてから欠伸をする彼はとても可愛かった。

「お疲れ様」

ニコッと笑って見せれば彼は微かに目を細めた。

「あぁ」

「ちょっと寝ようか?」

「テメェはもう寝ただろ」

ソファに座った彼を見て彼女もそれを追ってソファに座る。ちょこんと隣に座ってみれば彼はこっちを向いた。

「おい」

「ん?」

「膝貸せ」

「…え?」

思わず聞き返してしまう。

(それは俗に言う膝まくらってやつですか…?)

一瞬フリーズしていると彼はソファに寝転んでもう彼女の膝に頭を乗っけていた。

「な、ちょっと…っ」

「騒ぐな」

(そんなん言われてもさ…!)

太股にかかる彼の髪。それから眠たそうにまた欠伸をしてその綺麗な睫毛を伏せた。

(うわ…)

彼の寝顔はとても綺麗。思わず頭を撫でてしまいたくなるような少年のような寝顔だ。そっと髪に触れればフワフワとした前髪と温かい顔。彼は不機嫌そうに目を開け、紅い双眼を彼女に向けた。

「お前、そんな構ってもらいてぇのか」

「な、違…!今のは違くてっ」

(純粋に撫でてただけなのに!)

そう思っていたら再び目を閉じていた。同じことを繰り返すようだが、やっぱり触れたくなる。さっきよりそーっと触れたのに彼は目を閉じたままチッと舌打ちをした。

「ドカスが」

それでも抵抗の色を見せないため彼女は触り続ける。

(俺も触りたくなっちまって、寝れねぇだろ…)

暫くの間耐えていた彼だが、遂に頭を撫でる彼女の手首をガシッと掴む。

「、え…」

彼はそのまま起き上がり、掴んだ彼女の手首を引く。

「っきゃ?!」

そして、ドサリと。今度は何故か彼女が押し倒される形となっていた。

「ななな何すんのっ」

突然のことに目をしぱしぱさせる彼女に、彼は妖しくニヤリと笑って見せた。

「散々触ってくれたから、お返しだ」


彼のお返しは、3倍返し。




END

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キリ番リク下さった沙哉様、ありがとうございました!ボス大好きすぎて、自分の趣味丸出しなのですみませんでした(笑)
でももし良ければまたお願いしますね。これからも頑張っていくので、よろしくお願いします。
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