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いつもの笑顔のままコーヒーカップを傾けた。

「本当に読めない人ですね、貴女は」

彼女はムスッとした顔で答えない。

「話してしまった方が楽なのでは?」

「別に。骸には関係ないことだし」

やっと口を開けば素直じゃない言葉。彼は苦笑いを浮かべるが彼女は相変わらず仏頂面でコーヒーを啜るだけであった。




(( たまには素直に ))




ここ最近彼女の機嫌が悪い。話しかけても短い返事しか返ってこないし何をしても冷たい目で睨まれるだけである。理由を聞いても決して答えようとはせず、それどころかますます彼女の機嫌を損ねるだけであった。それもそのはず、原因は全て彼自身だったから。というより、正確にはクローム髑髏のせいなのだが。
名前は骸の彼女だ。しかしその彼女になっても彼とクローム髑髏との関係は変えられない。たとえ彼女でもクローム髑髏を越えられないのだ。そんなことが彼女を苛々させている。そんな些細なことなのに彼女の心を締め付けているのだ。
しかしそんな子供染みたことを言えるはずもなく、言ったところでどうしようもない。だから先程からただ彼を睨むだけであった。



「…名前?」

「……」

返事をしない彼女にふぅ、と息を吐く。

「もう少し、素直になってみたらどうです?」

「十分素直」

「では話していただけますか?」

「絶対嫌」

「…仕方ありませんね」

やれやれ、と首を振って見せると彼はまた少し口にコーヒーを含んだ。

(まぁ良いですよ。そろそろ効いてきますからね…)

その視線の先には彼女がまた一口飲んだコーヒーがあった…。

(早く諦めてくんないかな…)

彼女はそんな気持ちで彼を見た。それでも彼はいつもの笑顔、優しい口調で諦めなどこれっぽっちも見せなかった。

(もう私からどっか行った方が良いかも…)

そう思って部屋を出ていこうと立ち上がる。

「おや、どこへ行くのですか?」

「もう話すことないから犬と遊んでくる」

そう言って足を一歩前に踏み出した瞬間。

―ガクンッ

急に腰が砕けてしまい彼女は再びソファへ座り込む形となってしまう。

「…え?」

足がカクカクと震えていて力が入らない。彼女は突然の身体の異常に戸惑い、骸を見上げた。

「ど、しよ…?」

「どうかされたのですか?」

骸はわざとらしく心配するように見せて彼女の許へ駆け寄った。しかしそんな彼の様子にも気付かないくらい彼女は動揺していたのだ。

「足、に…力入ん、ない…っ」

「大丈夫ですか?…それより、名前の息が上がっていることが心配なのですが」

「え…、」

確かに先程までは何ともなかったのに。彼女は怖くなって顔を青くさせた。

「何、で…?どうなる、の…」

「名前、汗すごいですよ?」

「やだぁ…っ、なんか、怖…ッ」

「暑いのですか?」

「ん、身体、熱くて…」

動揺している彼女はいつもの威張ったような態度など全然なくてただ幼い子のように彼に助けを求める。彼はクスッと笑ってから、彼女にちゅ、と軽く口づけた。

「大丈夫ですよ、名前」

「で、も…っ」

ちゅ。

「大丈夫」

「ん…骸の唇、冷たくて気持ち良…」

「貴女が熱いだけです」

だんだんと大人しくなってきた彼女にキスの回数を増やしていった。そのままソファへゆっくり倒すと彼女の方から彼の首に腕を回してくる。

(薬でここまでなるのですか…)

彼は感心し、満足気に笑う。そう、彼は彼女のコーヒーに媚薬を仕込んだのだった。なかなか素直にならない彼女に無理矢理本音を吐かせようというのであった。先程彼女が急に立ち上がったことで全身に回り、やっと効き目が現れたのだろう。キスをやめると彼は舌を彼女の首筋に這わせ、そのまま胸へと下りていった。

「や、あん…ッ」

「どうしたのです?いつもより好い声じゃないですか」

「も…、あっ!イッちゃ…っ」

まだ首と胸元にキスをしただけなのに、彼女はビクビクと身体を跳ねさせている。

「凄いですね…」

彼は再び彼女に口づけ、舌で口腔を愛撫した。間もなく彼女は軽く身体を痙攣させてからぐったりとして彼から手を離す。

「キスだけでイッてしまったのですか」

「や、言わな…」

(本当に凄いです…)

彼は感心するようにため息をつき彼女を下ろす。彼女はトロンとした目つきで未だ余韻に浸っているようだった。

「むく、ろ…あたし、どうしちゃったの…?」

「クフフ、まだ分からないのですか。本当に鈍感なのですね」

「え…?」

彼はやれやれといったようにため息をつく。

「媚薬ですよ。効きはじめは遅いですが、とても強い」

「え…、」

何それ、と呟く彼女は苦しそうに息を切らせていた。

「ですから、気持ち良くなってしまうお薬ですよ。いつもの何倍にも神経が研ぎ澄まされ、触れるだけで過剰な反応をしてしまい、やがて全ての刺激が快感へと変換されてしまうような…ね」

ニコニコと笑う彼が、いつもの優しい彼とは別人に見えてしまう。

「なん、で…」

「クフフ。それは、貴女が変な意地を張っているからでしょう。お仕置きですよ」

彼はそう言ってから再度彼女に口づけた。






それから2回も達したくせに、彼女の身体はまだ熱を持っていた。と言っても肝心なところは触ってくれないのだから。胸を十分に揉みしだかれ、その頂点をゆっくり舌で愛撫される。下半身はジンジンと熱を持ち、触れてもらえない焦れったさからゆるゆると腰が動いてしまっていた。

「む、むく…、」

「何です?」

「何、で、触…っ」

彼は当然気づいているはずなのに、知らん顔で愛撫を止めない。いつもなら強情で何も言わない彼女は、遂に涙混じりの声で弱々しく訴えかけていた。

「触って、お、願…っ」

「触っているじゃありませんか」

しかし彼もどちらかといえばSに分類される人間だ。そう易々と願いを聞いてやるはずがない。しかも普段は絶対見られないこんな乱れた姿を目の前にしているなら尚更だ。
それにしても今日の彼女は何とも色っぽい。自ら彼の腰に手を回し早くと強請るように腰を振り。

(そろそろ触ってあげますか…)

自分が我慢できなくなったというのもあるのだが、彼は彼女の履いているものを全て脱がし、太股をやや強引に掴んで脚を開かせる。

「凄いですね…」

そこは彼女の愛液に塗れていた。しかしすぐには触らない。

「さて、どこをどうしてほしいのでしたっけ?」

彼女は泣きそうになりながら彼を見詰めた。

(何でそんな恥ずかしいこと…!)

彼はただニッコリ笑って早く言えと顔を訴えてくる。そんな羞恥で、ますます秘部から蜜が零れ出した。

「おや、見られるだけで感じてしまうのですか?」

「ち、ちが…っ」

「違わないでしょう、やらしい人ですね」

そんな厭らしい身体にしてしまったのは彼なのだが。彼は膝を折って屈むと彼女の脚の間に頭を入れる。ぐちゅぐちゅと厭らしく蜜が漏れるそこへフゥ、と一息。

「ッひゃ、あ…!」

さらに舌を尖らせてくちゅ、と侵入させる。秘部のナカで生温かいものがうねうねと動き、彼女は耐え切れなくなって彼の頭を掴んだ。

「骸っ、む…きゃ、あんッ!」

「クフフ、すごい声ですね。それでは最後までもちませんよ?」

舌をツゥ、と移動させ、秘部の上部へとやってくる。そこをくりくりと舌でいじると彼女はますます高い嬌声を上げた。

「あっ、あぁッ気、持ち…良、あ、」

(今日は素直なのですね…)

いつもは絶対言わない言葉も今日はこんなにもはっきりと。それはいつものプライドを軽々と捨ててしまえるほどに快感へ溺れている証拠でもあった。しかしそうとなればもっと乱れさせたい。そろそろ達しそうな彼女へ愛撫を止めてそっと耳元に唇を近付ける。

「これではお仕置きになりませんからね」

「っや、あぁ…っ」

拷問に近い。彼女は行き場のなくなった熱いモノに涙を零す。

「骸、何、で…っ?!」

「…では、何故機嫌が悪かったのか言って下されば、続きをしてあげましょう」
「え…、何で…ッ」

彼女の吐息は甘く熱い。もう余裕なんてものは無かった。

「っ、クロームに、とられたくなかったの…!」

「…はい?」

彼が目を丸くすると、彼女はボロボロと涙を零しながら言葉を繋げる。

「好きだから、負けなくない…、でも、勝てな、くて…ッ」

「…ばかなんですか、貴女は」

嗚咽交じりに訴える彼女にため息をついて彼はそっと抱きしめる。

「僕の1番は貴女ですよ。…分からないなんて、本当にばかです」

「う…、ごめ、なさ…っ」

しゃくりあげる姿さえ愛しい。彼はいてもたってもいられず、彼女をベッドの上へと移動させた。

「…な、に、」

「覚悟して下さいね?」

(僕の愛は大きいのですから…)

もう十分に湿っているソコへ指を挿れる。彼女は何故か無反応。

「おや…?」

(薬がきれましたか…?)

しかし、それは違った。

「え…、挿れた、の…?」

「はい。…分かりませんか?」

指を2本増やし、奥の方を突いてみる。内側がドロドロになりすぎて感覚がなくなっていただけで、彼女は再び高い嬌声と共に彼の指をきゅうきゅうと締め付けた。

「…すごいきついのですが」

「やっ、言わないで、よぉ…っ」

もっと奥の少しザラついたところ。そこをピンポイントに抉るように擦ると、彼女はビクビクと身体を痙攣させてしまった。

「またイッてしまったのですか?」

「…っは、はぁ…っ…!」

呼吸が整わず肩で息をする彼女。そんな彼女のナカから指を引き抜き、彼は意地悪くニヤリと笑った。

「さて…、そろそろ強請ってもらいましょうか」

「……え…、」

それが何を意味するのか分かり、彼女は下唇をキュッと噛んだ。

「おや、言わないのですか?まぁ良いでしょう。時間はたっぷりありますし、貴女が言うまでは挿れる気はありませんよ」

彼はまだニコニコと笑っている。ナカでドクドクと疼いているのが分かっている彼女は精一杯顔を背けながら、消えるような声で言った。

「むくろ…、ほしぃ…」

その言葉に、彼は本日最高の笑顔を見せた。




END

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キリ番リク下さいました、弥生様へ!甘裏とのリクエストでしたが、甘要素が見当たりません。むっくんをとりあえずドSにしたくて、自分のテンションが自重できず…(笑)
本当に申し訳ないです、でもすごく楽しかったです。ありがとうございました。
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