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(遅い…)
もう10分は彼を待っている。先程からチラチラと携帯を見るのだが彼からの連絡はない。
「何してんだよ…」
嫌そうに眉を顰めてから彼女はハッと口元に手を当てた。
(また言葉遣い悪くなっちゃってたな…)
ガシガシと頭を掻いて、ポツリと呟いてみる。
「わたし…」
(まだ慣れないな…)
彼女はまた暗い気持ちに包まれた。
先日心に決めたことがあった。彼のために少しは女の子らしくなろうと。大人の女性になるのはまだ無理だが、せめて“女の子”になろうと。いつも男の子のような言葉遣いをしているので、女の子のような言葉遣いにすることに決めたのだ。
彼はそのままの自分が好きだと言ってくれたが、それでは自分が納得いかない。
「わたし…、」
もう1度自分に聞かせる。
(早く、直さなきゃ…)
(( 嫉妬 ))
彼女の前に黒い車が止まり、出てきた彼は美しく銀髪の髪を揺らした。
「ゔぉぉい!遅くなって、悪かったなぁ!!」
あれからさらに10分待った。しかしスクアーロは、やはり連絡もよこさないで堂々と遅れてきたのである。彼女はひどく罵ってやろうかと思ったがやめた。
「俺を待たせるなんて良い度胸してんな」
そう言って冷たい目を向けるだけである。そして少し間が開いてから彼女はため息をついた。
(また『俺』って言っちゃった…)
散々言い聞かせた“わたし”に直せなかった自分に苛立ちながらスクアーロを見上げる。
「悪かったって…ほら、乗れよぉ」
「…ん」
丁寧にドアを開けてくれるから、彼女は大人しく車へ乗り込んだ。
これからヴァリアーのところへ行ってザンザスと会議だ。キャバッローネファミリーを通してリグレルファミリーとボンゴレファミリーは仲良くなったのだが、ちょうどツナが別の仕事で手いっぱいなので、その日はザンザスが代役になった、というわけだ。彼女はリグレルファミリーのボスということで、本当はとても怖いと知られるザンザスのところへなど行きたくなかったが、仕方ない。それでスクアーロが迎えに来たのだが…まぁ、ディーノの知り合いということで、スクアーロとは初対面ではない。むしろよく会う仲である。
「あー怖いなー…」
「何がだぁ?」
「ザンザスだよ。色々とやばいんでしょ?」
「うちのボスは機嫌次第だぜぇ。今日は比較的良い方だったと思うがなぁ」
「…なら良いけど」
今日のこの会議のためにヴァリアー内でザンザスの機嫌をとろうとどれだけ注意をはらってきたのか、彼女は知るよしもない。
「それより、」
「ん?」
ふとスクアーロがこちらを向く。
「お前どーしたんだぁ?何つーか、言葉遣いとか雰囲気とか変わったかぁ?」
「っ、ほんと?!」
(まぁ、さっきから気を付けてたんだけど…)
些細なことだが嬉しくなる。彼女はフフッと口元を緩めると、スクアーロは少し首を傾げた。
「何で変えたんだぁ?」
「ん、ディーノのため!」
そんな彼女の言葉に、スクアーロはあからさまに眉を顰めた。
「そうか…」
会議は30分くらいで終わった。ツナと話し合うより、何と言うかスムーズ。あちらがストレートに言ってくれるからこちらも直球で言い返せるからなのだろう。何度かザンザスが苛々していた場面もあったが、その度周りがフォローして殺されずにすんだ。
そして帰り道。
また運転手はスクアーロで、着くまでどうでもいいようなくだらない話ばかりした。今日は日本に帰るのではなく、ディーノのところへ泊まることになっていたのでそちらへ向かう。日本ほど遠くないからか、すぐに着いてしまった。
「ほら、着いたぜぇ」
「ありがと、スク」
またこっちへ回ってきてドアを開けてくれる。そんな些細な行動にも彼の紳士的な部分が見える。ニコッと笑って車を降りると、スクアーロは何か言いたげにこちらを見つめてきた。
「…どうしたの?」
「………あのなぁ、そんな言葉遣いにしなくても良いと思うぜぇ?」
「え?」
キョトンとしてスクアーロを見つめ返せば、少し落ち着きのない彼。
「俺はそんなお前が…好き、なんだし…」
「…え?」
サラっと言った彼の一言を聞き返してしまう。彼は多少視線を泳がせながら言葉を繋いだ。
「俺はお前が好きなんだぁ。今さら、だろぉ…」
(いやいや知らなかったけど…!)
びっくりしすぎて完全にフリーズしている彼女の腕を引き、そのままぎゅう、と抱き締める。
「っきゃ…?!」
「俺のモンになれよ、名前。そのままのお前で良いからよぉ…」
驚きすぎて頭がついていかない。彼女は抵抗するわけでも抱き締め返すわけでもなく突っ立っていた。
その時。
「久しぶりだな、スクアーロ」
後ろから彼の声がして彼女はハッと我に返りスクアーロを突き飛ばす。スクアーロは不機嫌そうな顔をして彼を見た。
「…あぁ。久しぶりだなぁ」
「名前を送ってきてくれたのか?わざわざ悪いな」
彼は笑っている。まるで何事もなかったかのように。そして彼女の肩を抱き、スクアーロに再び笑顔を見せる。
「じゃあな、スクアーロ。ボスにもよろしく」
ただ、その目は笑ってはいなかった。
あれから無言。
スタスタと彼女の腕を掴んで歩く彼を必死に追った。いつもなら彼女の歩調に合わせてくれるのだがそれもしない。身長も随分違うことから、彼女は若干小走りになる。そうこうしているうちに、もう彼の部屋に着いた。部屋に入るとやっと彼は止まる。彼女は少し上がった息を整えようと深呼吸していると、彼は弱い声で言ってくる。
「…何で変えんだ?」
「え、」
ふと見上げると、彼は伏せ目がちにこちらに視線を向けていた。
「ディーノ…?」
「俺、別に名前に変われって言ってねーだろ」
「……!」
やっと彼がしっかりした声で告げたと思えば、彼は突然彼女を姫抱きする。
「わっ、」
そのまますぐにベッドの上に下ろされた。彼は今日仕事があったためかスーツを着ている。そのセットでつけられたネクタイを気怠そうに外しながら、冷めた目で彼女の上に乗ってくる。
「俺が女にしてやるって言ったの、忘れたか?」
「っ、何言って…!」
カァッと顔を赤くすると彼は乱暴に口づけてくる。
「っん…!ちょ、んん…っ」
抗議しようと口を開ければ舌を入れられ。クチュクチュと音を立てられるのが恥ずかしいとこの前言ったはずなのに、それをされる。舌と舌が擦り合わされる感触にゾクリと震え、彼女は微かに彼の頭に手を添えた。いつもより強引なキスは怒っているからだろうか。身体がもう火照ってきた頃に彼はやっと離れてくれた。
「は…、ディー、ノ…?」
少し乱れた息。
トロンとした目で彼を見つめれば彼はニヤリと笑ってから彼女の服を慣れた手つきで脱がせていく。
「ふーん、こーゆー感じが好きなんだな」
「なっ、違…!」
「だっていつもより感度高いし、襲われてる感が好きなんじゃねえの?」
彼はそう言ってから彼女の胸に顔を埋める。そのまま舌を這わせ胸の突起を軽く噛むと、彼女はビクリと身体を跳ねさせた。
「あっ、ディーノ…っ」
「まだ触っただけだろ」
いつもより力強い刺激。何度も甘噛みされ、舌の先でなぞられ、それだけでもう絶頂を迎えそうになる。
「ディーノ、待っ…、あぁっ!」
「まだイカせねーけどな」
言葉通り愛撫を止められる。もう火照りきった身体には十分拷問で、彼女は泣きそうな顔で彼を見上げた。
「何、で…もう、」
「…その顔 反則」
彼はちゅ、とキスをすると、油断している彼女の秘部を指でなぞった。
「ッひゃあっ、」
まさに不意打ち。突然の刺激は強すぎてビクリと背を仰け反らすが、彼は構わず続ける。下着の上からクチュクチュと陰核を押し潰す。ぐりぐりと押される度に蜜が溢れ出し、もう下着はぐしゃぐしゃだった。
「あっ、あぁ…っ!ディーノ、や、あ…!」
「おぉ、好い声出てきたじゃねえか」
満足気に笑ってからやっと下着を取る。それから十分に濡らされたソコに、指を1本、2本。
「きゃ、ああ…ん!ディーノっ!もう…っ」
「もう、何?」
ナカの感触を楽しむかのように指を動かされ遂に彼女はイッてしまった。ぐったりとした彼女のナカから指を抜き、彼はその蜜を舐めとる。
「1人で終わんなよ」
「…え…?」
上がった息を整えていれば、彼は再び指を入れてくる。
「ッや、何…っ」
「俺も交ぜてくんねぇ?」
こんな時でも余裕な笑み。やはり大人な彼には敵わないと身体を通してでも教えられる。彼の自身が秘部に当てられ、彼女はぎゅう、とシーツを掴んだ。彼は一気に埋め込むと、緩く動き出す。
「あ、あぁ…っ!」
それは彼女の好いところを知りつくした動きで、奥の方を突き上げたり先端を擦りつけるようにぐりぐり動かす。そんな彼に煽られて、彼女はすぐにまた達してしまった…。
「ったく、気絶しやがって」
(2回くらいで、普通するか…?)
彼は寝ている彼女の頭をくしゃくしゃと撫でる。
それにしても。
(俺のために変わろうとしてるなんて、可愛い奴)
フッと笑ってからスゥスゥと寝息を立てている彼女の頬にちゅ、とキスをする。
「他の男見る余裕なんかなくしてやるよ」
そう言ってから彼女を抱き締め、彼も隣で眠るのであった。
END
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1回リクエストしていただいたのにまたまたしていただけるなんて光栄すぎて泣きました…零雛様、本当にありがとうございました!楽しかったので、また何かあればお願いしますね。
今後もいちごおーれをよろしくお願いします。
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