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※学パロ




ぶすっとした顔で、今日も2人を睨む。

「おーにおくんっ」
「うわ、何か来た」

げんなりとした彼を余所に、閻魔はにこにこと笑っている。彼の背後からぎゅうと抱き着くと、その最高の笑顔のまま彼女の方へ目を向けた。




(( 2人のライバル ))




「名前ちゃん、おはよぉ」
「…おはようございます、会長」

苛々を込めて精一杯の笑顔。その顔に閻魔はますます笑うだけだ。

「あっはは、良い顔〜!ね、鬼男くん、」
「離れろ、このイカっ!」
「ッ痛ひぃっ!」

ガツン、と背後にいる閻魔に頭突きを食らわせ、彼は暑苦しいとでも言いたげにため息をつく。

「名前の前でベタベタしないで下さいよ」
「え、名前ちゃんに隠れてなら良いってこと?」
「そーゆー意味じゃねえ、このバカ!!」

ニヤリと笑う閻魔にすかさず怒鳴った。閻魔が来ると必ずこうも騒がしくなってしまうのだ。

(でも…、)

チラリと2人を見ると何だかとっても楽しげで。それは自分と彼よりももっと長い付き合いであるために越えられない関係。いくら恋人とはいえ、信頼関係はあっちの方がずっと強いだろう。だからこそ、モヤモヤする感情。これがただの嫉妬だなんて、とっくに分かっていた。

(男の子に妬くなんておかしいかもしれないけど…でも、)

自分が1番でいたい、と思うわけだ。とは言え、そんな重いことを言えるはずもない。
彼は毎日のように生徒会の仕事があるために、暇さえあれば生徒会長の閻魔に連行される。今日もまた例外ではなく。

「じゃあ名前ちゃん、朝来て直ぐで悪いんだけど、鬼男くん借りるね」
「…はい」

そんな彼女の姿に心配そうな彼を引き摺り、閻魔は教室を出ていった。






放課後も、相変わらず7時半まで生徒会だ。彼は明るいうちに先に帰って良いと言うが、教室で課題等をして時間を潰す。彼が教室に走って帰ってきたのは、もう8時近かった。

「遅くなってごめん!待っててくれたんだな…」
「大丈夫だよ。鬼男くんと一緒に帰りたいもん」

そう言うと、彼は一瞬目を見開いてから背を向けてしまう。

「鬼男くん?」
「……いや、不意打ちは反則…」
「何が?」

キョトンと首を傾げて顔を覗き込むと、彼の顔は少しだけ赤く色付いていた。

「…!」
「ちょ、見ないでいいから!」

彼はブンブンと首を振り、それから鞄を手に取る。

「じゃあ帰ろっか」
「うん」

はにかんできた彼に笑い返すと、同時にガラァッと教室のドアが開いた。

「おーにーおーくーん!一緒かーえろっ」
「…出た」

きっと2人ともげんなりと口を開いたのだろうが、教室に入ってくる彼は相変わらずいつもの笑顔だ。

「あれ、名前ちゃん居たの?俺お邪魔ー?」
「当たり前だろ…」

彼がふるふると身体を震わせると、閻魔はますます楽しげだ。

「いやーいつも思うけど、鬼男くん達って良い反応してくれるよねー」
「迷惑がってるだけだろ」
「やだなぁ、それが楽しいんだよー」
「このイカが…!」

但し怒っているのは彼だけではない。彼女はぎゅうぅっと拳を握った。

「…会長、」
「んー?」

ゆらりと歩いていき、閻魔の前に立つ。

「何で毎回毎回邪魔ばっかするんですか!私から鬼男くんを取らないで下さいよ!」

ビシッと指を突き出すと同時に、彼の顔は微かに赤に染まる。

「別に取ろうとしてないよー、鬼男くんは」
「じゃあ何で鬼男くんとばっかりいるんですか?!」
「それは生徒会だから仕方ないのー」

ぷくーっと可愛く頬を膨らませても、怒りMAXの彼女には何の効果もない。

「じゃあ私も生徒会入りますよ!」
「おぉ、良いね!入っておいでよー」
「〜〜〜っ、もう、とにかく鬼男くん取るの止めて下さいよ!」
「もー違うんだってばぁ…」

閻魔はゆっくりと彼女の腕を引き、そのままぎゅうと抱き締めた。

「俺が取ろうとしてんのは名前ちゃんなの!別に鬼男くんに会いに来てるわけじゃないしねー」
「え…」

不意打ちで、カァッと顔が熱くなるのが分かった。しかしすぐに閻魔は彼女から離れる。否、離されたのだ。

「名前に触んな!」

ダンッと音がして、閻魔がドアに押し付けられる。勿論そうしたのは鬼男で、彼は目をぎらつかせて爪を伸ばしている。

「あーごめんごめん。いきなり奪おうなんて思ってないから怒んないで?」
「まず名前は僕の彼女なので諦めて下さい」

キッと睨むと彼は閻魔から手を離し、彼女の腕を掴んで出ていこうとする。

「あ、名前ちゃん、ばいばぁい」
「え?あ、さよなら…」

刹那、ニッコリと笑う閻魔に、彼は苛々と彼女の腕を強く引くだけだった。






それから玄関まで、無言。彼が怒っているのは分かっているので、彼女から言葉を発することはできなかった。
玄関へ着くと、急に彼は彼女の方を振り向いた。

「なぁ、」
「え?」

その目はとても切なげで、細められた目を見ているだけで胸が締め付けられる。

「あんまり他の男の前で、隙見せんなよ…」
「え?! そんな…」

抗議しようとしたら、その前に視界が塞がれた。彼の腕に包まれているのだ。

「余裕、ないからさ…」

少し掠れた声。彼女の胸を一層締め付ける。

「私だってね、」

彼女もまたその背中へ腕を回す。

「余裕なんかないよ。会長に妬いちゃうくらい、鬼男くんが大好きで余裕ない」
「…!」

一瞬、腕の力が強まったのを感じた。

「…僕もすげー妬いたんだからな」

それから甘く塞がれる唇。何度か啄むように口づけられた後、口の中にくちゅりと侵入する舌。全部が愛されている証で、彼女は必死に応えた。
暫くすると苦しくなって、力が抜けてきて、彼はそれに気付いたかのように慌てて離れた。彼女の目尻に浮かぶ涙が苦しさを物語っている。

「ごめん、大丈夫?」
「ん…鬼男、くん…」
「ん?」
「もっと…」
「…!」

クイッと服の裾を引っ張られ、彼はドクンと心臓が跳ねた。

(やばい…我慢できるかな……)

彼は言われた通り、再び深いキスをした。










「なー妹子、」
「…何ですか」
「あれ…」
「………僕らは裏口から出ましょう」
「だって公共の場だしさ、あれはまずいよ…!」
「うるさいですね、さっさと行きますよ、太子」
「ああでももうちょっとだけ見たい気もする…!」
「出た、へんたいし…」




END

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空気が読めないんじゃなくて読まない閻魔とか素敵です。結構独占欲の強い鬼男くんがストライクです。名前様、お付き合いありがとうございました。

20111001
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