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※学パロ




大好きで、大好きで。それでも少し距離があって。

(あ、また女の子といる…)

彼女はチラリと窓を見た。




彼が気になり出してから、もう5ヶ月が過ぎた。初めの頃は優しくて、まだ生徒会に入ったばかりの彼女に丁寧に色々教えてくれたのに。

(最近、話してもくれないじゃん…)

彼女は苛々しながら資料に目を戻した。




(( 好きな子は ))




「あれー?妹子ちゃんはー?」

閻魔が突然大きな声を出したので、作業をしていた生徒会役員は全員顔を上げた。

「妹子さんなら、また呼び出されていきましたよ」
「ふーん…最近妹子ちゃんモテるねぇ」

唯一顔を上げなかった曽良がパソコンの画面を見詰めながら言うと、閻魔はニヤリと笑う。

「モテ期ってやつかなぁ?太子にも早くくると良いな!」
「うるさいでおまっ!閻魔にだってこないんだろ」
「え?俺はほら、会長だからさぁ、結構皆と接点あるし、そこそこ告白だってされてるんだよ?」

確かに閻魔も毎日のように告白されている。ただ妹子との違いは、それを真剣に断るか軽く流すかだ。

「何なんだよ…私の何処がいけないんだ!」
「カレー臭いところじゃないですか。それより早く仕事しろ!」

ついに苛々と鬼男が爪を伸ばす。それを見て慌てて仕事に戻ろうとしているが、やはり彼女だけはボーッと窓の外を眺めるだけだ。

(ここの部屋、眺めが良すぎるんだよ…)

窓の外では、告白している女の子を目の前に毎度困って相手を傷つけないように必死な妹子の姿が丸見えだ。

(私も気持ちを伝えたら、妹子先輩を困らせるのかな…)

「…名前?」

ふと、鬼男が手を止める。それでも何も反応しない彼女を見て、鬼男は首を傾げてから席を立つ。彼女の方へと歩いていき、トントンと肩を叩くと、やっと彼女は振り向いた。

「名前、どうした?」
「あっ、鬼男先輩…」

正気を取り戻し、それから視界が曇っていることに気付いて顔を伏せる。一瞬見えた涙に驚きながら外に彼の姿を見つけると、鬼男は察したように頷いてから彼女の頭を撫でた。

「…今日はもう、帰っても良いよ。それ、僕がやっとくから」

彼女の手から資料を受け取ると鬼男は席へ戻る。涙を拭ってもう1度窓の外を見るともう話がついたようだ。彼女は少し考えてから鞄を手にし、役員にペコリと頭を下げる。

「ではお先に失礼します」
「ああ、気をつけて帰るんだぞぉ」
「名前ちゃん、ばいばぁい」

ヒラヒラと手を振る太子と閻魔に愛想笑いを浮かべ、ドアを閉めようとする。刹那、閻魔が何か思い出したかのように立ち上がる。

「あっ、待って、名前ちゃん!」
「はい?」

ニッコリ笑い、彼女の気持ちを和らげるような顔で。

「大丈夫だよ。妹子ちゃんは俺と違って、好きな子以外はしっかり断るからね」
「…!」

(会長も気づいてたの…?)

恥ずかしくなってコクリと頷く。いつもふざけていて何も知らないようで、きちんと周りを把握できている閻魔だからこそ言えることだ。彼女はまたペコリと頭を下げ、ドアを閉めた。


「なぁ閻魔、」
「ん?」
「妹子が、どうかしたのか?」
「……うん、太子はそれで良いよ」







1人で歩く帰り道は長く感じた。1歩1歩が重く、最後に言われた言葉を頭の中で繰り返す。

「好きな子以外は、か…」

(じゃあ私もバッサリ断られちゃうんだね…)

閻魔が言った通り他の女の子を断ってくれるのは嬉しいが、それを自分に置き換えてしまうとまた泣きそうになる。立ち止まり空を見上げると、自分の気持ちとは裏腹に雲一つない青空が広がっていた。

「妹子先輩…」

いつまで『先輩』なのだろうと考えたら、『先輩』でなくなる日が来るとは到底思えない。

「…妹子、先輩……」

また涙を流すと、急に後ろから足音が聞こえてきた。パタパタと走るような足音はだんだんと近付いてきて、彼女は無意識にそちらを振り向いていた。そこには、全力で走ってくる彼の姿。髪型も制服も乱れさせて。

「…妹子先輩?」
「名前っ、帰るの早すぎ…っ」

彼女に追いつくと、彼は手を膝に当てて息を整えた。じんわりとかいている汗でどれだけ真剣に走ってきたかが分かってしまった。

「何で…」
「え、名前が僕に伝えたいことがあるから探してたって、副会長が…」
「鬼男先輩が?」

(鬼男先輩、心配性なんだから…!)

彼はやっと息を整えて、彼女の頭に手を置いた。

「泣いてたんですか?」
「えっ、泣いてないですよ?!」
「嘘。隠さなくてもいいですよ」

頭を撫でられると、その心地好さとか、手の感触とか。彼を感じるほど負の気持ちが湧き出てくる。

「先輩、…変なこと聞いても良いですか…?」
「ん、何?」

撫でられたまま、呟くように言う。

「…あの人、ちゃんと断ったんですか?」
「あの人?…あぁ、知ってたんですか」

彼は彼女から手を離す。

「僕は一途ですからね。好きな人以外には興味がないんです」
「そう、ですか…」

(直で聞くと、やっぱきついかも…)

下唇をきゅ、と噛む。

「先輩はひどい人ですよね」
「え?」
「先輩を好きな人は、たくさんいるんですよ?」
「ああ…いや、でも僕は1人しか見れないので…」

またグサリと心を刺す。

「そういうの、先輩のこと好きだとしたら傷付くんですよ…?」
「…名前?」

少しだけ彼の制服の裾を摘んでみた。

「一途な先輩のことだから、好きでいられるのも迷惑なんですよね…?」
「な、何言って…」

彼は少し焦りながらも、彼女の顔に両手を添えて、ぐいっと上を向かせる。

「それ、僕のこと好きみたいに聞こえますよ?」
「…だめですか」

キッと彼を睨む目は、今にも涙が溢れそうで。彼は自然と彼女を抱きしめた。

「なっ、ちょっと先輩?!」
「…名前なら大歓迎なんですけど…」

聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟かれ、彼女は驚いて思わず聞き返す。

「え?」
「だから、僕は名前以外見えてないって意味です」
「だってそれ、好きな子…」
「名前が好きってことですよ?」
「…え?」

背中に回っている彼の腕の力が少し強くなる。

「名前は、違うんですか?」
「違い、ません…!」

彼はクスッと笑い、彼女の頭を撫でた。

「それなら良いですが。…僕、結構一途ですからね。なかなか離してあげませんよ?」
「…覚悟しときます」

それにクスリと笑い返して、彼女も彼の背中へ腕を回した。




END

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過去の文章なのでまとまりがなく幼い文章ですね…申し訳ないです。名前様、お付き合いありがとうございました。

20110930
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