(1/1)




べしゃ、と嫌な音がして、思わずため息が出た。隣に居たはずの彼女が急に視界から消えたのだ。きっと、彼女は。

「…いったあ…」
「何やってるんですか、まったく…」

無様に地面に転んでいる彼女はゆっくりと起き上がると、彼を涙目で見上げた。




(( 泣き顔にキスでも ))




「痛ーい!…うぅっ」
「ああもう、何で直ぐ泣きたがるんですか、あなたは」

腕を掴んでぐいっと引っ張り、起き上がるのを手伝ってやる。彼女はいつも転んでは泣くから、最早慣れっこだという感じだ。じわりと涙を溜める彼女の頭を優しく撫でる。いつもは冷たくしている彼も、流石に泣き顔には弱いのだ。なるべく泣かれないようにと撫でてやるのに、彼女の涙は止まらない。遂にぽろぽろと溢れ出した。

「曽良くん、痛いよぉ…」
「僕がやったみたいな言い方は止めて下さい、あなたが勝手に転んだんでしょう」
「う…そうだけど…」

やはり泣き顔には弱い。いつも言っているような台詞なのに、泣いている彼女の顔をきちんと見ながら言えと言われたら言えないだろう。現に今、視線は地面へと落とされているのだから。
ぐす、と鼻をすする音。自分が泣かせたわけでもないのに、気分が良いものではない。彼は仕方ないですね、と呟いた後、彼女を強引に引き寄せた。

「泣くなと言っているでしょう」
「う、わ?! ちょっと、曽良くん…っ」

顔を近付けたと思えば、彼女の涙を舌で掬ってやる。目尻に溜まるそれを舐め終われば、動揺しつつ赤面した彼女が目を泳がせていた。敢えて距離を離さずじっと見詰めれば、視線から逃れるように視線を背け。

「涙、止まりました?」
「…他にもやり方はあるでしょ…」

ばか、と呟くと、彼は微かに目を細めた。笑うわけではないが、どこか楽しげで。

「それとも、こっちにした方が良かったんですか?」

ちゅ、と唇が重ねられ、彼女はますます赤面した。




END

--------------------

涙ぺろりはかっこいい人にしかできませんよね、日和だと曽良くんが1番適役ではないかと書かせていただきました。名前様、お付き合いありがとうございました。

20111002
(  )

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -