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※学パロ




突然家へ押しかけてきたと思えば、直ぐに数学のプリントを差し出された。

「これ課題なんだけど、分かんなくて…ちょっと教えてくれない?」
「ちょっと会長、受験生ですよね。私未だ1年生なんですけど…」
「勉強できないから内申稼ごうとして生徒会長やってるくらいだもん!もうやばいんだよー…」

しょぼんと肩を落とす彼に、彼女は軽くため息をついた。

「…未だ数Tと数Aしか教えられませんが…」
「うん!ありがと、名前ちゃんっ」

ぎゅう、と抱き着かれ、彼女は鬱陶しそうに彼を突き飛ばした。




(( テストのご褒美 ))




先程から彼女が説明しているのだが、彼は全く聞いていなかった。

「で、このグラフの時のMの値は、y=f(x)に代入するわけですから、f(2)になるとどうなるか分かりますか?」
「…え、」

急に、説明が途切れる。プリントすら見ていなくて、彼は彼女の顔を見詰めていたわけであって。

「…どこが?」
「会長、もしかして聞いてなかったなんて言いませんよね?」
「ま、まさか…!」

にっこりと黒い笑顔を浮かべる彼女を見て、彼は血の気が引いたのを感じた。

「ねぇ 名前ちゃん、」
「はい?」
「f(x)って、何…?」
「………」

彼女の動きが完全に固まった。それから笑顔を見せている筈なのに、黒いオーラが湧き出てくる。

「1年生からやり直した方が良いですね…!」
「うっ、怖いこと言わないでよー…っ」

彼はそんなことを言いながら、彼女にバレないようにほんの少しフッと口角を上げた。






それから4時間位続いただろうか。彼というより、最早彼女の方がダウンしてしまいそうだ。彼が全くというほど出来な過ぎて、泣きたくなってくる。

「何で分かってくれないんですか!」
「だってつまんないんだもん…ごめんね、名前ちゃん」

こんなに馬鹿でさ、と悲しげに言う。その言葉を聞いて、彼女も何かとしてやろうと強く思ってしまう。

「じゃあ、この問題解けたらご褒美あげます」
「ご褒美ー?」
「はい。その方が、やる気出ません?」
「うーん…内容に因りけり…」

ぐでっと机に突っ伏したまま、彼女の方へ顔を向ける。

「名前ちゃんがぎゅーしてくれるなら、この問題頑張るー…」
「う…じゃあ、してあげるから頑張って下さい」
「やった!」

再びシャーペンを持ち直した彼は、そのままカリカリと解いていく。しかし、それが止まるのは早かった。本当に、とても早く。

「あーもう嫌っ」
「頑張って下さいよ、もう…」

呆れて何も言えない。こんなに出来なくて受験は大丈夫かというくらいに。

「会長、大学はどこへ行くんですか?」
「東大ー」
「…はい?」
「嘘うそ、ごめんなさい…!」

ギロリと睨まれた後、彼はふと顔を上げた。

「まだ決めてないんだよねー。でも近場が良いな、名前ちゃんと離れるのは嫌だし」
「え、あ…そうですか…?」

少し嬉しさもあるが、やはり大学に受かるかの心配が先に出る。

「そう考えているなら、もう少し頑張って下さいね」
「うー…あと少しだけなら…」

それからまた、4時間位みっちりと教え込まれた。2人が顔を上げたころには辺りはすっかり暗くなり、もう夜になっている。

「うわ、もうこんな時間でしたね!」
「んー、何時ー?」

2人は休憩時間にして背を伸ばす。時計を見ると、もう8時を回っていた。

「じゃあもう帰ろうかな」

夜遅くまで居るのは迷惑だしね、と立ち上がる。彼女も見送りますよと立ち上がると、彼はとんでもないことを言いはじめた。

「ありがとう。これで明日の模試も頑張れそうだなー」
「…え?」

(もし…って、模試?!)

自分の耳を疑いたくなる。

「会長、模試って言いました?」
「うん、全国のやつ。1年生はないんだっけ」
「1年生はないですね。え、会長、もしかしてそれだけの知識で受けようだなんて…」
「やだなーもう、名前ちゃんが教えてくれたでしょ」
「今日教えたのは1年生の範囲の数学だけです!」

うがあ、と怒鳴ると、にっこり笑ってポンポンと頭を撫でられた。

「じゃあ数学は1位とるー」
「はぁ…もう、」

(この人って、マイペースってゆーか馬鹿ってゆーか…)

思わず笑えてきてしまう。

「じゃあ1位とれたら、何でもしてあげますよ」
「やったー!じゃあ生徒会の仕事をもっと手伝ってもらうのと、えっちなこといっぱいするのと、」
「ちょっと会長?」
「えへへ、いいでしょ」

未だ頭を撫でてくる彼を見上げ、フッと笑って見せた。

「いいですよ、1位をとれたら、ですが」
「ふふ、言ったね」

彼は妖しく笑って見せ、家に帰ったらもう少しやろうと言って帰っていった。彼女はそんな彼に、ただ呆れることしかできなかった。






―翌日。

「あああ…大丈夫かな、会長…」
「どうしたんですか?」

心配で仕方なくて、思わず口から出ていたらしい。その証拠に、隣の席の曽良が首を傾げてきたのだ。

「3年生、今日模試なんだって。会長…、数学30点とれるのかなぁ」
「え…名前さん、知らないんですか?」
「え?」

今度は彼女が首を傾げ、曽良は目を細めて呟く。

「会長は理数は毎回トップですよ?その他も、2位とか3位とか」

ピシリと固まる彼女の動き。目が白目を剥きそうになる。

「え…?」
「今回も満点じゃないですか?」
「え…?!」

ガクン、と首を揺らし、項垂れた。もう石化しそうな程のショックの大きさだ。

「だって、あたし昨日、会長に数学教えたんだけど…」
「演技ですよ、多分」

固まる彼女を置いて、授業が始まるチャイムが鳴ってしまった。




放課後。
勢い良く生徒会室のドアを開けると、彼は会長席へと悠々と座っている。

「あ、名前ちゃん!」
「…会長、」

誰が見ても一目で分かる位、彼女は怒っている。

「模試はどうでした…?」
「ん?あぁ、名前ちゃんのおかげで満点とれそうだよー」
「私のおかげじゃないですよね、それ」

彼はピクッと肩を揺らす。それからてへ、と舌を出してから、ニヤリと笑って見せた。

「だって、一生懸命教えてくれる名前ちゃん、可愛かったし」
「会長?!」
「それに…、」

彼はにやにや笑って席を立った。

「名前ちゃんとえっちなことしたかったしー」
「…っ、何言っ、」
「そーゆー約束でしょ?」

意地悪く笑われると、何も言えなくなる。コクン、と頷くと、彼は彼女をぎゅうと抱き締めた。




END

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計画通り…と心の中でにやにやする閻魔が好きです。この子は常に計算高いと信じています。名前様、お付き合いありがとうございました。

20111001
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