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※学パロ
「…え?今なんて?」
「あ、知らなかった?」
(( 無自覚な男 ))
太子には彼女がいた、と閻魔から聞いた。それを聞いた時、激しい脱力感が彼女の中にじわじわと。
(知らないで太子先輩のこと想ってた、なんて…ばかじゃん、私)
それが悔しさに変わるのには、差ほど時間もかからずに。ポロポロと涙を零し始めた彼女を見て、閻魔はギョッとして彼女の頭を必死に撫でた。
「ちょ、名前ちゃん…?何でよー…」
「すみ、ませ…おかしいな…、」
大好きだったのに、閻魔の一言でこんなに気持ちが揺らぐなんて。暫く泣いて、閻魔もその間ずっと頭を撫でていてくれた。するとその時、生徒会室のドアが開く音。
「ほれ来てやったぞーゴワッ」
「ごめんね太子、今そーゆー雰囲気じゃないから…」
来たのは勿論太子。タイミングの悪さは世界一だ。閻魔は彼に苦笑いを見せた。
「…名前がどうかしたのか?」
彼は直ぐに彼女に気付き、彼女の許へやって来る。そしてバトンタッチだと言わんばかりに閻魔が彼女から手を離し、少し苦笑いをして生徒会室を出ていってしまった。
「名前、どうしたんだ?」
「何でもないです…」
「言わなきゃ分からないでおま…」
「いいですから…」
どんどん俯く彼女に焦り、彼は顔を覗き込むように話し掛けるが、それすら避けられて。
「転んだのかぁ?」
とんちんかんなことを言って、動揺を隠せないでいる。そんな姿さえ、とても愛おしい。ますますキュンと胸が鳴るが、涙も止められないまま。
「な、泣くなって〜…私は口下手なんだぞぉ…」
閻魔とは違い、頭を遠慮がちにちょこちょこ触れる。撫でているつもりなのだろうが、正直擽ったいだけだ。
「太子先輩は優しすぎます…」
「私は優しさ100%で出来ているからな!」
褒めたつもりはないが、ポロッと自然に出てしまった一言に、彼はにやりと笑って見せた。くす、と笑うと、彼も嬉しそうにして。
「名前は笑顔が1番だぞー。私と一緒に騒いでた方が楽しいだろ」
「ふふ、騒ぐのは太子先輩と会長だけで十分ですよ」
彼は一瞬ぶすっとしたが、そうなのか、と呟いた。
「でも名前もそれを楽しそうに見てるぞ?」
「それは…」
太子先輩を見ていただけです、なんて口が裂けても言えない。彼女は視線を泳がせた。
「とにかく、私は笑ってる名前が好きだ!」
不意打ちの一言。心臓が大袈裟に反応し、顔が熱くなるのが分かった。
「狡いですね、ほんと…」
「え?…名前、顔赤いでおま」
無自覚で彼女をときめかせるなんて、悪い男。首を傾げる彼に、彼女はまた笑って見せた。
「ちょっと会長、押さないで下さいよ」
「ごめんって!で、中の2人はどうなのっ」
「良い雰囲気ですよ…?」
「ほんと?なら良いけどさぁ、」
閻魔は申し訳なさそうに頭を掻いた。
(彼女いたけど、今は名前ちゃん一筋なんだよ、って言おうとした途中だったのに…)
END
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太子に彼女とかできるのか、とか言うのは置いときます。個人的にはちょい役閻魔が愛おしいです。名前様、お付き合いありがとうございました。
20111001
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