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コンコン、とノックすれば、3秒も経たないうちにドアが開いた。
「こんにち「やぁ名前チャン!」
(……何これ…)
開いたと同時に挨拶したのにそれを遮られ、その上ぎゅう、と抱き着かれた。
「…何してるんですか」
「んー、愛の充電中〜」
「…今日は仕事で来たんですけど」
「あはは、名前チャンってば。仕事以外で来たことないでしょ?」
「そうでしたっけ」
そのまま促されて部屋に入った。
「あれ?今日は本当に1人なの?」
「はい、そうですが?」
「いつもみたいに、ボディーガードさんとかは?」
「今日はいません」
「あぁ、そうなんだ。やっとあの赤ん坊も僕の事信用してくれたのかな」
「…さぁ、よく分かりませんが」
そう言っていつも座るソファに腰かけ、彼は彼女の向かいに腰かけた。
(バレて、ないよね…)
彼女はゴクリと唾を飲み、床に視線を落とした。
(( 手強い彼 ))
「あいつんとこ、1人で行ってこい」
「…え?」
今日の朝、リボーンから突然告げられた。
「あいつ、多分お前に惚れ込んでると思うんだ」
「え、ちょっと待って、話が見えないんだけど…」
「だから、色仕掛けしてこいってことだ」
「………」
「お前に聞かれたら絶対答えるはずだ。ミルフィオーレファミリーの弱点を聞き出してきてくれ」
「…そんな、」
「名前。今はお前しかいない。…殺されるわけじゃねえし、いざという時は助けにも行ってやる。頼む」
リボーンに深く頭を下げられる。
「ちょ、ちょっと待って!分かった、分かったから!!」
「…助かった。気をつけて行ってこいよ」
顔を上げさせると、いつものニヤリとしたあの顔。
(あぁ、やられた…)
そんなこんなで、彼女はこれから色々と演じなければならない。下手に目を合わせないように視線を落としたまま鞄から資料を取り出した。
「今回はこれについて、意見をお願いしますね」
「んー。ここはもういいかなぁ。それより、こっちの方が欲しいかも」
「…!」
その資料をパラッと見ただけで彼は直ぐにそれを返してくる。さらに違う資料を出してくるから驚きだ。
「…え、何その顔」
「あ、いえ」
「僕だって仕事くらいするよー。まぁ、これをまとめてくれたのは正チャンだけど」
「あぁ、そうですよね!」
「ちょっと!」
少し拗ねた彼をクスッと笑いながら、彼女は口元に手を当てた。そんな彼女に彼もフッと笑ってから彼女の隣に移動してくる。
「え、」
それから優しく肩を抱かれ、耳元に唇を近付けられる。
「まぁ、僕が1番欲しいのは君なんだけどね、名前チャン」
「っ、」
ピクッと反応してしまったのが自分でも分かり、顔をカァァッと赤くした彼女は彼が触れているその手を振り払った。
「お仕事中です!」
「はいはい」
キッと睨む彼女をクスクスと笑うと彼は頭の後ろで腕を組む。
「で、次の質問は?」
「はい…?」
「今日は色々と頼まれてるんじゃないのー?名前チャン1人なんて、それが目的なんでしょ?」
「っ!」
(やっぱバレてた…!)
平静を装っていたつもりなのに…、と自分の演技力の無さに涙が出そうになりながらも、そんなことないですよ、とそっぽを向いた。
「ふーん、何だ。名前チャンが素直に言えば教えてあげるのになー」
「えっ、本当ですか?!」
素直な反応にクスッと笑う。
「本当だよ。ただ、聞いてる間は名前チャンのこと僕の好きにさせてよね」
「え…?」
どういう意味だと言わんばかりの顔で彼の方を向こうとした瞬間、ちゅ、と唇に何かが当たる。それが何かなんて鈍感な彼女でさえすぐに分かってしまって、彼と距離をとろうとしたがそれがもう頭の後ろに腕が回っていて逃げられない。
「ん、」
それから耳にキスが落とされる。ピクッと反応する彼女に口角を上げながら彼は行為は止めずに囁いた。
「質問いいの?僕は止めないよ?」
「んっ、ちょっと、待っ…」
「待たない。リミットはこれが終わるまでだけど、この調子じゃあ最後までシても文句はなしだよね?」
「はっ?!待っ、びゃく、」
―グィッ
「ッんぁっあぁ…!」
(かーわいいの…)
そのまま彼はゆっくり彼女を押し倒した。
とぼとぼと帰ってきた彼女に目をやり、リボーンは少し目を見開いた。
「おい…、どうした、その跡…」
「…分かってるくせに。リボーンのばか…」
首から胸元から、服で隠しきれないところに朱く印が付けられていて、彼女はそれを隠すわけでもなくリボーンを睨んだ。
「…聞き出せたか?」
「何も、言わせてもらえるわけ、ないでしょ…」
「そうか」
リボーンはニヤッと笑って空を見る。
(それじゃあまず、餌付けは成功、か)
本当の目的は聞き出すことではなくこんな最低な目的で派遣されたとは知らず、彼女はまだ自分の無力さに落ち込んでいた。
END
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餌付けだって気づいててもちゃんとノッちゃう白蘭だったりしたら可愛いです。名前様、お付き合いありがとうございました。
20111112
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