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―ガッシャーン!

「あ」

それが落ちた瞬間、血の気が引いたのが分かった。

(ああ、…私、殺される…)

そうとさえ思えてしまう。それは、校長先生が大事にしていた花瓶だったから。

(もう…帰りたい…)

時すでに遅し。
そんな言葉がピッタリだった。




(( お手伝い ))




「僕は別に構わないんだけど」
「え」

(じゃあ何で呼んだの…)

放課後、案の定呼び出しをくらった。校長室へ。…じゃなくて、何故か応接室へ。というのも、校長は今出張中のため留守にしているかららしい。だから教員達は全て責任を風紀委員に押し付けたのだ。勿論風紀委員には良いものではない。しかし割ってしまったのが彼女だと知ったら彼は2つ返事で承諾してしまったのだ。それなのに、応接室へ行けば彼はやる気なく欠伸をしているだけだったので気が抜けた。

「あの、それじゃあ私は…」
「勿論色々とやってもらうけどね」
「あ、ですよね…」

やっぱり怒られるのかな、なんて思っていたら、多量の資料を差し出された。

「それ、ホチキスでとめてくれる」
「え…あ、はい」

(何だ、それだけで良いんだ…?)

拍子抜けだったが、彼女は素直にそれを受け取った。








トントン、と角をそろえ、最後にそれを鳴らした。

―カチリ。

「ふー…やっと終わったぁ…」

ホチキスでとめた、机の上にたまった資料。それは本当に多く、外はもう日が暮れ始めている。

「雲雀さん、終わりました」
「ん…、ご苦労様」

彼は委員長席から立ち上がり、軽く目を擦りながら彼女の許へと寄ってきた。

「本当に終わったんだ…」
「何ですか、その言い方…。てゆーか雲雀さん、眠いんですか?」

素直に驚いた顔をする彼へ、彼女は少し呆れ顔。それからさっきから気になっていたことを聞いた。彼はハッとした顔をしたが直ぐに目を伏せる。

「別に」
「寝てない、とか…?」
「違うよ。それに、君には関係ない」

ムスッとした表情をするが目は赤い。きっとそろそろ始まる学園祭の準備であまり寝ていないのだろう。しかしプライドの高い彼はそんなに頑張っている姿など見られたくないのだ。そんな彼を愛しく思いながら、彼女は少し口元を緩めた。

「ちゃんと寝て下さいね。体調崩したりしたら、大変ですから」
「…別に、余計なお世話」

ますます眉間に皺を寄せるので、彼女はそろそろ話を止めなければ殺されると思い、急いで鞄を持った。

「じゃあ私もう帰りますね」
「ん」

ペコリと会釈してから彼に背を向けてドアに手を掛ける。その時、彼は何かを思い出したかのように「あぁ、」と声を漏らした。

「待ちなよ、名前。忘れもの」
「はい?」

(忘れものなんてしたっけ…?)

彼が近付いてくるのを感じ、振り向くともう彼の右手は彼女の後ろの壁につかれていた。つまり壁に追い込まれている状態。

「え…雲雀さん?」

彼は眠さで開かない目で彼女を見つめる。そんな伏せ目さえ格好良い。カァッと顔を赤くした彼女は俯いてしまったが彼は彼女の顔を覗き込むようにして角度をつけて彼女に口づけた。

「なっ…!」

たった一瞬のこと。彼だって平然としている。そんな中彼女は1人赤面して口元に手を添えた。

「お礼だよ。今日は助かったからね」
「は、はい…」
「またおいで」

彼はにやっと彼女へ笑って見せる。普段絶対笑わないその彼にドキリと胸を鳴らし、彼女は戸惑って急いで彼に背を向ける。

「しっ、失礼しますっ!!」

ガチャッとドアを開けたと共に走り出し、彼ははぁ、とため息をついた。

「本当に、忘れ物…」

そして、さっき彼女が動揺して落とした鞄を拾い上げると、彼女の教室まで足を運んだ。




END

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雲雀さんのお手伝いしたいです。本当に。そんな自分の欲望のままにryごめんなさい(笑)
名前様、お付き合いありがとうございました。

20111103
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