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「センパーイ、名前センパーイ」
「何さっ」
「…もー…怒らないで下さいよー」

彼ははぁ、とため息をついて彼女を追い掛ける。

「もうフランなんか知らない!ついてこないでよっ」
「えー…ついてこないでと言われましても、ミーだって帰り道こっちですしー、大体帰る場所同じじゃないですかー」
「知らないっ」
「…なんて目茶苦茶なー」

未だに怒る彼女を呆れ半分で追い掛け、彼女の手首を掴んだ。

「センパイ、いい加減にしないと、ミー怒りますよー?」
「何さ…フランの、ばか…」

大人しくなったものの、口ではまだそんなことを言っている。そもそも何故こうなったのか、それは20分程前に遡る。




(( 任務の後に ))




今回の敵は少々手強かった。いつもなら彼が幻術を使えば、大方任務はそのまま終わる。相手が幻覚に引っ掛かってくれるからだ。しかし、今日の敵は幻術が使えない場所まで2人を誘き寄せ、直接戦わなければならなかった。面倒くさいと同時に、相当な数なので時間が掛かる。仕方なく2人で分担して片付けていたのだが、彼女が油断して、背後をとられてしまった。しかも彼女自身それに気づいておらず、『危ない!』と割り込んで入ってきたのが彼だったのだ。
彼は腕を少し掠っただけで深くは刺されなかったので何とも思っていないのだが、彼女は自分の所為で傷つけてしまったことに罪悪感を感じたと共に、もし掠り傷ですまされなかったらどうするのだ、と怒鳴り立てたのだ。それでも彼は大丈夫だと続けるものだから、とうとう怒ってしまった、というわけだ。

(何が大丈夫なのさ…フランがもし、もし死んじゃったら、私が大丈夫じゃないよ…)

彼女は彼に両手首を掴まれたまま俯いた。

「…センパイ?」
「何さ、フランのばか」
「さっきから そればっかですねー、ミーはバカなことなんてしてませんー」
「したじゃん!」
「何ですかー?」

彼女は涙で視界が揺らいだが、悟られないように下を向いたままだった。

「私なんか庇わないで。フラン死んじゃったら、私…」
「ミー、生きてるじゃないですかー」
「今回は良かったけど、もしそれが銃だったら?それが毒だったら?…フランはきっと、何だって私を庇ってくれる…」
「…当たり前、じゃないですかー」
「嫌っ…フランが死んじゃう…」
「良いんですよー。ミーは名前センパイの死ぬとこなんて、見たくないですからー」
「え…?」

彼に顎を掴まれて強引に上を向かされる。彼は泣いている彼女を見て、やっぱり、とため息をついた。

「良いですかー?名前センパイがミーの死ぬところを見たくないのと一緒で、ミーも名前センパイの死ぬとこなんか、真っ平ごめんですー。だったら自分が死んだ方が良いんですー」
「フラン…でも、それは嫌なの…」
「分かってますよー。名前センパイが死ぬくらいならミーが死ぬってだけで、誰も死にたいだなんて言ってません。センパイ可愛いですしー、ミーが死んだら直ぐ、誰かに盗られちゃいますしねー」

彼はクスッと笑って見せると、彼女にそっとキスをした。

「だから、強くなりますー。名前センパイを守って生きられるように」
「フラン…」

ポロッと涙を落とすと、宥めるようにキスをされる。

「大好きですよ、センパイ」
「ん…」

ペロリと口腔を舐められ、下唇を軽く吸われる。甘い吐息を吐くと、彼は満足気に笑って、彼女を解放した。

「さぁ、帰りますよー」
「うん!」
「お、良い返事ー。帰ったら続きしますけどねー」
「…っ?!」

ビクッと後ずさる彼女の腕をしっかり掴んで、彼は上機嫌に鼻歌を歌っていた。






END

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ちょっぴりシリアスなネタ、だいぶ前のを引っ張ってきたので文がかなり幼いですね。フランが頑張って男前になっているお話しって個人的に大好物です。名前様、お付き合いありがとうございました。

20110923
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