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白蘭に後で来てね、と言われていたことを思い出し、彼女は急いで彼の部屋へ向かった。しかし部屋に行ってみれば誰もいない。
(あれ…今日仕事遅い日だっけ?)
そう思い出してみれば、まあまあそうも思えてくる。だが、いないからまた来ようと言ったって彼が何時に帰ってくるのか見当がつかない。
(白蘭が戻ってくるまで待ってるかぁ…)
彼女は近くにあるソファに腰かけた。
(( マシマロ ))
ふとテーブルの上を見ると、彼の大好きなマシュマロが封をきったまま置いてある。
「あ、苺チョコ味だ!」
甘いものが大好きだった彼女はすぐにそれに手を出した。
パクッ
「ん、おいしー!」
チョコの甘味と苺の酸っぱさで、そのマシュマロは最高に良い味だった。
(…白蘭、怒らないよね…?)
あまりの美味しさについつい手が伸びて、彼女はやみつきになったかのようにそれを口に運んだ。
と、その時。
ガチャリと音がして ドアが開く。彼が帰ってきたのだ。
「おかえり白蘭ー」
「ただいま、名前チャン。遅くなってごめんね」
彼は上着を脱ぐと、ネクタイを緩めながらこちらへ来る。
「…名前チャン、もしかしてそれ食べたの?」
「え?」
すると、彼女の姿を見るなり驚いたように彼女に問う。
「うん、食べたけど」
(やっぱダメだった…?)
恐る恐る彼を見上げれば、それ僕のお気に入りなんだぁ、と言われてしまう。
「ご、ごめん…怒った…?」
「ううん、怒ってないよ。もともと名前チャンに勧めるために残しといたんだから」
ニコッと笑うが、それが嘘だか本当だかはさっぱりだ。現に彼の機嫌はあまり良いようには思えない。彼女はどうしたら良いのか分からず、でも今までの動作を無意識にやってしまう。つまり、もう1つマシュマロを取っていたわけだ。
「あ」
(間違えた!すっごく無意識だったっ)
しかしもう口に入れてしまったし、出すのも嫌だ。彼女はオロオロとうろたえ、それを見た彼はクスリと笑った。それから片膝を彼女の脚の間につき、優しく口づけてくる。唇が触れたかと思えば、突然舌が侵入していた。
「んっ、ぅ?!」
(え、まだマシュマロ入ってるんだけど…!)
しかし彼はそれが目的であって、彼女の口の中からマシュマロを奪い取ったのだ。マシュマロを取るだけ取って唇を離す。口をパクパクさせる彼女を見て満足気に笑った後、彼はマシュマロを飲み込んだ。
「でもこれ以上はダーメ。さっきも言ったけど、僕のお気に入りなんだ。今度名前チャンにも買っとくからさ」
「う、うん…」
コクコクと頷き口を押さえると、彼は彼女の隣へ腰掛けてきて、彼女の手首を掴んで口から離す。そのまま顔を近付けてきて、本日2度目のキスをした。
「んっ、は…っ」
彼のキスはいつもと違い味わうように舌をなぞられるような、そんなキスだった。暫くして唇を離すと、彼女の口の端から飲み込みきれなかった唾液が流れおちていた。白蘭はクスッと笑って自分の親指で拭い、またそれを舐める。
「名前チャン、口の中甘いね」
「…白蘭のもだよ…」
激しいキスの後だった為か、彼女の目はトロンとしている。彼はそんな乱れた彼女を見てゾクゾクした。そして、再び深いキスをされる。そのうち彼は彼女を静かに押し倒し、より深いキスを。彼女は唇が離れた隙を狙って彼を叱りつけた。
「ちょっと、何で私押し倒されてんの?!」
「僕がスイッチ入れちゃったからー」
「ダメ!昨日シたばっかでしょ!」
「えー良いじゃーん」
それから彼はニコニコと笑って彼女の耳元で囁く。
「だって名前の方が 甘いんだもん」
「……ッ」
“名前チャン”から“名前”に変わったのは、彼が本当にスイッチを入れてしまったという何よりの証拠。彼女は諦めたかのように彼の首に腕を回した。
END
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苺チョコ美味しいですよね!(全力)
名前様、お付き合いありがとうございました。
20111016
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