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ニコニコと笑う彼は、いつもと違う。ご機嫌なのか気まぐれなのか、表情からはまったく読めない。彼は猫のような人だ。
(( 甘えたくて ))
「ひーめっ」
甘く優しい声で、何度も彼女を呼んだ。
「何なの、もう…」
「何で構ってくんねぇの?王子、暇」
「あらそう、見て分からないかしら王子様」
彼女もまたニッコリと笑って、手元の報告書をヒラヒラと揺らして見せた。
「俺もう終わったし」
「…よく言うよ。どうせまたスクに押し付けたんでしょ」
はぁ、とため息をつくと、彼は面白く無さげに口を尖らせた。すると、彼は突然席を立って…、
ぎゅう。
「…ちょっと、暑いから」
「名前が構ってくんねぇから、王子が勝手に構うことにした」
「はぁ…?」
背中に彼の体温を感じ、彼女はますます嫌そうに顔を引きつらせた。彼は彼女の後ろから、ぎゅう、と抱き着いてきたのだ。この暑い季節の中、限りなく拷問に近い行為。
「ねーベル、頼むから離れてて」
「やだ」
「お願いー」
「ししっ、やだっつの」
(いつからこんな甘えん坊になったんだろ…)
言えば言うほど、ぎゅうぅっと腕に力が入ってきて、彼女は不覚にも胸をときめかせた。
(…まぁ、いっか)
たまには可愛いベルもさ、と心の中で呟くと、彼女は再び報告書へと視線を戻した。
「名前、まだー?」
「あと2行!これ終わったら構ってあげるから、良い子にしてて?」
「ガキ扱いすんな、ばーか」
それからあと2行は結局彼に邪魔されて、スクアーロにまわったとか、まわってないとか。
END
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過去書いた夏のお話し。今となっては季節外れですね、むしろ寒いのでくっついていてほしいです(笑)
名前様、お付き合いありがとうございました。
20111001
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