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彼女は任務が終わると直ぐ、行く場所があった。
――コンコン、ガチャッ
「スクー、居ないのー?」
彼女は返事の返ってこない彼の部屋に入り、辺りを見回す。すると部屋の奥からサァァ…、と水の音がして、彼がシャワーを浴びていることがやっと分かった。仕方ないので勝手にソファに腰掛け、彼が出てくるのを待つことにした。しかし任務後というのもあり、瞼が重い。こくり、こくり、と彼女は首を揺らす。そのまま、いつの間にか眠りに入ってしまった…。
(( 照れ屋なだーりん ))
彼が風呂を上がると、ソファには丸まるように寝ている彼女が目に入った。
「なぁっ?!」
(何でいるんだぁ…?)
彼は彼女を起こさないよう、自分の大きすぎる声を封じながら、動揺の為か視線を泳がせた。それから、昨日彼女の『任務終わったら部屋行くね』という言葉を思い出し、やっと整理がついたようにため息をついた。
「…ったく、こんな時間に来やがって…」
時計の針は、もう夜の10時をとっくに過ぎたところを指している。自分が風呂に入ったのは10時くらいだったので、彼女が来てからそんなに経っていないはずだ。ということは、それまで任務だった、ということになる。
いくら今日の任務がかなりの相手の暗殺だって、これ程遅くなるまで任務をさせていたボスにさえ、少しばかり怒りを覚えた。
「…まだこいつ、ガキじゃねぇかよ」
彼は独り言のようにボソリと呟くと、彼女を姫抱きしてベッドへ運んだ。それから自分はベッドの横に浅く腰掛け、眠っている彼女の髪を優しく撫でた。
(寝顔も可愛いな、こいつ…)
何をされたわけでもないのに、彼はドキリと胸を鳴らした。そのままちゅっ、と頬にキスをしてみれば、自分の顔が一気にカァァッと赤くなっていくのが分かった。
(俺ダセェな…こんなことで赤面してどうすんだぁ!)
気を紛らわそうと彼はベッドから離れ、キッチンへ向かう。そこで適当に酒を掴み、ガバッと飲んだ。
「…危ねぇ」
(本気でロリコンになるかもしれねぇ…!)
ドキドキと心拍数を上げながら再び彼女の許へ行き、寝顔をじっと見詰める。
(こんなに好きになっていたとはなぁ…)
はぁ、とため息をついて彼女の頭を撫でると、自分がますます情けなくなる。
「好きだぁ…名前…」
本人には素直に言えないが、寝ている時なら、と彼は何度か呟いた。
刹那、彼女は意識を取り戻しはじめ、微かに『ん…、』と声を出した。彼はギョッと彼女に目をやると、彼女はゆっくり目を開いた。
「…ん?あ、おはよ、スク」
「ゔぉぉっ、今の、聞いて…?!」
彼はますます顔を真っ赤にする。勿論彼女は寝ていたのだから聞こえているはずがないのだが、彼の異常な反応にニヤリと口角を上げてしまった。
(カマかけてやろー)
「聞いちゃったよースクってば可愛いー」
「なっ、嘘だろぉ…っ」
彼は耳まで真っ赤にして俯いた。
「ねぇ、もう1回言ってよ」
(私、聞いてないし)
しかし彼は首を縦には振らない。
「頼むから忘れてくれぇ!」
「良いじゃーん、ねっ?」
彼の反応を見る度に、彼女の好奇心は膨らむばかりだ。
(スクがそんなに恥ずかしがるなんて…気になるー!)
彼女はニヤニヤ笑っていたが、ふと真面目な顔に変え、彼の首に自分の腕を絡ませた。
「ねぇスク、お願い…だめ?」
極めつけは上目遣いだ。これに関しては彼女が意図的にやったのではなく、身長差で自然となってしまったのだが。
どちらかといえば、彼女の方が頑固だ。今回も彼女の粘り勝ちと言っても良いだろう。彼はギリッと奥歯を噛み締めた後、顔を真っ赤にしながら小さく呟いた。
「………好き、だ」
「…え?」
突然のことに驚いて、彼女はつい聞き返してしまった。スクアーロはますます顔を赤に染める。
「何で聞き取れねぇんだ、この距離で?!」
「え?!あ、違う違う!聞き返したんじゃなくて、びっくりしちゃって…」
「……やっぱ、柄にもないこと言うんじゃねえなぁ…」
彼は拗ねたように顔を背ける。それが愛おしく感じ、彼女は彼をぎゅうっ、と抱きしめた。
「大好きだよ、スク。私も大好き…ありがとね」
「…あぁ」
彼もまた彼女の背中に手を回し、しっかりと抱き締める。
しかし、時間帯も時間帯だし、ベッドの上だ。愛しい彼女にこんなことを言われて、我慢できる男でもなかった。
「…じゃあ今日は、俺に付き合えよな?」
「……はい?」
ドサリとそのまま押し倒され、彼女は目をぱちくりさせた。
「いや、でも今日任務あって疲れ「うるせぇ」
彼は彼女の首筋に顔を埋める。
「ちょ、待ってスク…あっ、」
そのまま朝まで彼に付き合わされた彼女だったが、たまには素直になってくれる、ということが判明したので 良かった。
次の日、任務が入っていたのは彼女ではなく彼だったので、彼は寝不足のまま任務に行く羽目になった。
END
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スクアーロを赤面させたかっただけです、変態ですみません。名前様、お付き合いありがとうございました。
20110922
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