各場所で先生の指示が響く運動場。
こういう時の運動部は部活よりも体育祭を優先され準備に駆り出される。

それはテニス部も例外なく、オサムちゃんのでかい声が響く。
それに白石は小さく溜息を零した。

「準備開始ー!さっさとやったら早よ帰れんでー」

そう言い去って行く顧問の背中を見やるとその先にいた自分の彼女が目が入った。
テントの骨を持って歩いているようやけど、重たいやろうな。
フラフラとしてるのがよくわかる。


いつ転けてもおかしくなくて、結花の元へ早く着くように体が動いていた。
が、白石が着くより先に結花の持っていたテントの骨が傾き、同時に姫華の体も傾いた。

白石は手を伸ばすが届かない。
代わりに結花を支えた人物に白石は驚いていた

「女の子がこげに重い物ば持つもんじゃなか。これは男の仕事たい。城野はこっち持ってほしか」

結花からテントの骨を取り代わりに重ねられたコーンを姫華渡した。

カランコロンと下駄を鳴らし所定のところへ足を進め出し、先に進んでしまった千歳に追いつこうと結花も早足で後を追う。

その光景を見送ると、自分が伸ばした手が虚しく空を握った。

その手に目を向けると妙な気持ちが心を占める。
嫉妬とはまた違う言いようのない何かが占める…。


隣まで走ってきた謙也に肩を叩かれ我にかえった。
いつも通りに振る舞おうとしても謙也は目敏く俺の変化に気付いて「何かあったんか?」と聞いてきたが、「準備めんどいだけや」と返すので精一杯…。



「…こんなん俺らしくない」



握られた掌をゆっくり開きながら吐き出された悲痛な言葉は謙也に聞こえることはなく、風に流されていった。






2011.9/2  


Title by  Aコース様 


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