授業が終わりざわざわと騒ぎたつ廊下にはそのまま帰る人や部活に勤しむ人で賑わっている。
そんないつもの放課後
少し違うといえば、いつも教室に来てくれる彼が部活の顧問に呼ばれて迎えに来ていないことぐらいだろうか
「それじゃウチも帰ろかな。それじゃまた明日な、結花。練習がんばって!」
ひらひらと手を振り去っていく友人を見送りながら私も帰り支度をして部室に向かって行った
いつもと違うことがあれば何故か落ち着かずにソワソワしてしまう。
それほどにも、彼の存在が大きいことを思い知らされる。
少し考え事をしていると後ろからもの凄い衝撃がきた...
いつものことながら加減というものを知って欲しいとつくづく思う
「結花姉ちゃん!今日はアレないんか〜?」
私の腰に巻きつきながらキラキラした笑顔で問い掛けてくるこの子に突進したことを怒るよりも可愛さが勝ってしまってついつい甘やかしてしまう
「ごめんね、金ちゃん。今日は持ってきてないから明日持って来るね?」
「ほんまに!?やったー!わい、結花姉ちゃんの持ってくるレモンのやつめっちゃ好きやー!」
未だに腰に巻きついている金ちゃんを見ていたら、弟がいたらきっとこんな感じなんだろうなと思った
そんな考えをしていると後ろからよく知った人が少し遅ればせながらやってきた
「コラ!突進すんなっていつも言ってるやろ!」
「だって結花姉ちゃんは怒ってへんもん!」
金ちゃんの襟元を掴んで私の腰を開放してくれた。
しかし、金ちゃんは不服そうに口を尖らせいる。
こんなにも懐かれるとは思わなかった。
嬉しいことには変わりないけれどね
「そういうことやないっちゅー話や!・・また白石に怒られても俺は知らんからな」
「イヤやー!白石に怒られとーない!!」
「そうやったらこれからは気ぃつけなアカンで?」
小さく謙也君が溜息と一緒に吐き出したセリフを聞いて金ちゃんは泣きそうな顔で「気ぃつける!」と何度も頷きながら言っている。
蔵ノ介は金ちゃんがこんなに怯えるぐらい何をしたのだろうか...
なんだか可哀想になってくる
「足止めしてもうてすまんな城野。金ちゃん、部活行くで!」
顔の前で手を挙げて謝ってくれる謙也君は何だか金ちゃんのお兄さんみたいだと思ったら笑ってしまった。
彼は金ちゃんだけでなく誰に対してもよく面倒を見てくれる
「ううん、大丈夫だよ。あっ!部活が終わるのっていつもと同じ時間かな?」
部活へと行く謙也君たちに聞いておきたい事を思い出して尋ねたら「あぁ」と納得したように小さく声を出した
謙也君は少し微笑んで「白石に言っとくわ」と言伝役を受け持ってくれた
そんな謙也君に礼を言い私も部室の方へ足を進めた
そこまで広くない校舎
部室に着くまで時間がかからなく、もしかしなくてもテニスコートの方が遠いと思われる
それなのに会いに来てくれた金ちゃんが可愛くて仕方がない
今度から飴やチョコなど何か小さなお菓子を持ち歩こう…蔵ノ介に見つからないように
見つからないようにと思ったのは日頃から金ちゃんを甘やかすなと口を酸っぱくして蔵ノ介から言われているから
そんなことを言うのは部長としてらしいけど、言い方とかがなんだかお母さんみたいだと何度も思った。
そういう風に思っていたのは私だけではなく、財前君もオカンみたいだと言っているのを聞いたことがある
何だか、四天宝寺の男子テニス部は身内のような感じに思わせられる。
それぐらい仲がいいのは知ってるし、部活が違う私にも身内のように接してくれる皆がすごく好き
一人頬を緩ませながら着替えていると集合の合図が聞こえてきて慌てて部室を飛び出した
2011.9/2
Title by Aコース様