再会とは時に残酷なモノ
少なからず、私の心は憎しみが満ちている。

この人はきっと私よりも、将臣君よりも苦労をしていないと思ってしまった。
同じ境遇ではないけれど、辛い思いをしているのに…


なんて身勝手な自分。


汚い。
憎悪に塗れた汚い自分。
この人を見ていたら私は自己嫌悪に陥ってしまう。



「母上―。母上!」

屋敷内に遠くから響く幼い声。
それに答えるかの様に一枚の障子がスッと開き幼子を呼び寄せる。

「安徳様。こっちです」

「母上、還内府殿!お祖父様が呼んでおられます」

障子の向こうに居た女性と顔を合わしパァっと喜ぶ幼子は口調や先程呼び寄せた呼び名で位が高いことが伺える。
そしてそこの部屋に母と呼ばれる女性ともう一人いた事が判明した。

「わざわざ呼びに来てくれてありがとう」

抱きついている安徳にふわりと微笑む女性は母と呼ぶには若く見える。

お礼の言葉に気を良くした様に目を細めて喜ぶ少年に手を伸ばし頭を撫でているその光景に将臣はやれやれと息を吐く。

「すっかり‘母上’が慣れちまったな、未来。まぁ、こんなに時間が過ぎちまったんだ。仕方ないか」

「それぐらい徳子さんが恋しかったんじゃないのかな?今まで母親に甘えられなかったんだもの」

ポツリ、ポツリと互いに小さく互いに言葉を零し、その目は遠く見つめている。
総てを悟ってしまっていて、それでも覆したいと誓った目。

途方もない願い。

しかし、二人とも呼ばれているからには立ち上がり進まなければならなかった。
辛い道程でも。

「さて、清盛をこれ以上待たせる訳にもいかねぇから行くか?」

思い立った様に声を上げた将臣に安徳帝も未来も目を向けた。
すると、先程まで真剣に遠くを見据えていた瞳が微笑んでいる。

「なんか、前にも合ったな」

その言葉にハッとした未来も思い出したのかクスクスと笑い出した。
そんな二人の顔を交互に見つめる安徳帝は少し膨れている。

「ごめんなさいね、安徳様。清盛様のところへ行きましょう」

優美な仕草で立ち上がる未来に将臣はしげしげと見詰めている。

自分は剣術に打ち込んでいる間に彼女は仕草、作法をこの平家に合わせようと学んでいたらしい。

たった2年。
されど、自分達にはあまりにも長い時間が経っていた様だ。と思い知った。


 た だ 、 そ れ だ け な の に
人を変えるには十分な時間。





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