はらり…はらりと降りゆく雪。
ここに着て2度目の雪だった。

慣れとは恐ろしいもので一人で着ることの出来なかった着物は今では着れる様にもなり、動き辛かったのに走ることさえ出来てしまう。
ふいに溜息が漏れ、外で降っているであろう雪に気を向けた。

「今年も積もる…かな?」

窓を開けると冬の風が入ってきて身震いをした。
その風が少し後ろの壁で凭れている彼のところにも届いたのか、彼が立ち上がる時の衣擦れの音が静かな部屋に響き渡る。

「妹君は雪がお好きなようだ、な」

クッと喉を鳴らして独特な笑い方で、ゆったりとした早さで話し掛けてくる低い男の声。

初めて会ったときは怖くて仕方がなかった。
目が合っただけで喉元に刀を当てられいるかの様に錯覚を起こしていた。
けれど、今となっては恐怖の代わりに見とれてしまう。
怖かった目も、雰囲気さえも知盛の魅力なのだと気がついた。

本当に慣れとは恐ろしいものだ。

「そういうわけじゃ…。ただ、日が過ぎていくのは早いなぁって思っただけ」

振り返って見ると目の前には知盛。

それも、軽く腕を伸ばせば抱きしめることが出来るほど近くに…。
思いもしないぐらい近くに居て肩が小さく跳ねる。それに気付かない知盛ではなく、またも喉で笑われてしまった。

感じ取れてしまった反応に文句を言ってやろうと視線を上げると絡まった視線。
蛇に睨まれた蛙の如く動けなくなった私は知盛の伸ばされる腕を視界に捉えるとギュッと目を瞑った。

が、待っても衝撃は来ず、代わりにパタンと戸の閉まる音が聞こえたと同時に前の人の気配が遠のいていくのがわかった。
そして、固く閉ざしていた目を開けると目を細めてクッと嫌な笑い方で笑っている知盛がいた。

「何を期待していた…未来。俺は窓を閉めただけだ。お望みと有れば期待していた事をしても構わないぜ?」

言い終わるや踵を返し部屋からでていこうとする知盛。
恥ずかしさと怒りでだんだん顔が赤くなってくる私。
知盛が部屋からでる寸前に私は彼の背中をバシッと叩いて走って逃げだした。
逃げた先はもちろん、有川君の部屋。


この2年で気付いた事。

知盛が私を‘妹’と呼ぶときはからかう時。
徳子さんとしてではなく、ちゃんと未来として見てくれている。
それは私だけでなく有川君に対しても同じだった。



知らない間に
知盛に元気づけられていた。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -