名前を呼ぶよ

いつまでも


名前を呼ぶよ

永遠に...






こんなにもどかしいなんて
不毛すぎや。
何で厄介なヤツに想いを寄せたんやろか。

「でなでな〜、謙也先輩が―……」

今も隣で幸せそうな顔してノロケとるヤツなんかを…。
口を開けば二言目には「謙也先輩、謙也先輩」…。

ええ加減に

「ほんまウザいわ、三上」

「ちょっとぐらいええやんか!謙也先輩のことで喋れるんって光しか居れへんねんもん!」

ポロッと零した俺の本音も、今の三上にはいつも言う軽口や思われて流された。
腹立たしい。

今、三上の隣に居るんは俺やのにな…。

俺を見てくれへん。

俺を呼んでくれへん。


不意に鳴り響く携帯の音。
その曲は前に三上が1番好きや言うてた曲。
一瞬だけ俺は刺が刺さった様に心臓がチクリとした。

そんな曲を設定する相手なんか聞かんでもわかってまうわ。

「早よ、謙也先輩んとこ行ってこいや」

三上に目をやると若干頬を染め緩められ顔で頷き、ドアの方へ行った。
その姿は告白しろと後押しした日と被せてしまった。

そう
その日も、ほら…
こんな風にドアの前に着くやクルッと振り返り手を振った三上に俺はシッシッと追い払うような仕草をして俺が好きになった顔で「ありがとうな、光!」って言うんや。


閉められたドアの音。
クシャリと髪を掴み後悔する。
早よ俺が告って少しでも謙也先輩に近付けさせんと、俺を見るように仕向けとけば変わったんかって思てまう。

1人になった教室は居心地が悪く、広く感じた。
だからなんか腐った、途方もない事を考えてしもたんか…。


呼んだら声は届くのに…心には届かへん。
近いのに…遠い。



名前を呼ぶよ

いつまでも

届かないとわかっているけど

名前を呼ぶよ




今の俺は

今の俺には、君以上に好きになれる人がおらん。




2011.6/8再掲載

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