‥つまりは、何が言いたいかというと。
 
 
『‥気に入らねえ』
 
 
その一言だけが、口に出てしまった。
 
 
『あ‥やっぱり、似合わない、かぁ‥』
 
失敗した、と思ったときにはもう遅い。
 
『ごめんね?‥あたし、そろそろ行こうかな』
 
『ひな‥』
 
 
くるりと俺に背を向け、歩き出してしまった。
まずい。勘違いさせた。
 
『隊長‥、嫉妬するのは分かりますけど、言葉が足りなさすぎだと思いますよ?』
 
『‥分かってる』
 
そう返してはみたものの、ぐさりと刺さる松本の言葉。
追いかけて言い直そうか‥でもなんて言やいいんだよ!“さっきのは嘘だ”?“やっぱり似合ってる”?
 
だけど、藍染に合わせてるのは気に入らない‥。言えば気持ちがばれるかもしれねえから、そのことも言いづらい。
 
 
そんなことをぐるぐると思い悩んでいると、隊舎へ戻ろうとしている雛森に吉良が声をかけているのが見えた。
すかさず入る、松本の実況。
 
『あぁ‥あれは絶対、似合ってるね、って誉めてますね』
 
『‥‥』
 
『吉良ってば頬染めちゃって‥わかりやすいですねぇ』
 
 
『‥‥‥』
 
『雛森だってすごく嬉しそうですし‥あ、雛森も頬染めてません!?』
 
『‥‥‥‥!』
 
 
すぐに雛森の方へと足が動いた。
 
 
 
 
 
 
 
『‥‥最後のはちょっと嘘ですけどね』
 
そう、松本が笑っていたと知るのは後のことだった。
 
 
 
 
 
 
『そうだ、雛森くん‥』
 
『雛森!』
 
名前を呼んで、割って入った。
驚いた顔で俺を見る雛森。吉良は若干慌て顔だ。
 
『な、何‥?日番谷く』
 
『これ‥外してくれねえか?』
 
雛森の赤ぶち眼鏡を示しながら言った。
 
 
『え!?な、なんで‥そんなに嫌なの?‥そんなに気に入らない?』
 
『お、お言葉ですが日番谷隊長!それはちょっと‥』
 
 
黙ってろ、とばかりに吉良を睨む。その勇気は認めてやるが、雛森は渡さねえよ。
雛森に上手く伝わるよう、頭の中で反芻してから口を開く。
 
 
『聞けよ、雛森。俺は似合わないと思うから外せって言ってんじゃねえから』
 
 
揺れる瞳に目を合わせながら、ただな、と呟く。
 
 
『藍染に合わせて眼鏡なんか掛けるより‥‥俺は、いつものお前の方が“らしい”と思うんだよ』
 
言えた‥そう思えば、雛森から返ってくるのはさらなる疑問の声で。
 
 
 
『じゃあ‥なんで日番谷くんは、“あたしらしい”方がいいの‥?』
 


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