ある静かな夜。
 
彼は突然現れました。
 
 
ドタンッ!バタバタ‥!
 
『こら待ちやがれっ!!』
 
 
『‥‥‥ぇ?』
 
 
15才の桃の部屋に窓から転がりこんできた彼は、彼自身の“影”と追いかけっこをしていました。
 
 
 
『‥‥‥‥』
 
バタバタバタ!ガンッ、カシャン!
 
彼と影が部屋を走り回るせいで倒れていく椅子。ヒビの入る鏡。散らかっていくクローゼット。
 
 
あまりのことに呆然としていた桃でしたが、彼女もとうとうキレました。
 

『いい加減にしなさーいっ!!!』


幸い家族は出かけていた為、家には桃一人しかいませんでしたが、確実に近所に響くほどの大声でした。
 
しまった‥なんて思ったのも束の間、桃は目を見開きました。
 
少年がグイッと桃の腕を引っ張りながら頭を下げてきたのです。(彼はよく見ると綺麗な銀髪に翠色の目をしていました。)
 
 
『悪かった!!だけど今はとりあえず、こいつの足を俺の靴に縫い付けてくれっ!』
 
 
腕を見ると、先ほどの桃の大声に驚いた隙をついたのか、少年はしっかりと影を捕まえていました。
 
 
 
『え、えぇ‥うん、いいよ』
 
 
困っているようだったので、桃はさっきの怒りは忘れてパパッと、だけどしっかりと縫い付けてあげました。
 
 
‥それが、桃と少年の出会いだったのです。
 
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