『‥?おい、雛森‥どうしたんだよ?』
『‥‥‥』
赤くなったままうつむく雛森。
『‥‥った‥?』
何か呟いた。けど、聞こえない。
もう一度雛森が呟く。
『さびし、かった‥?』
『‥!』
雛森の言おうとしていることが、分かった気がした。
『あのね、あたし‥ずっと、日番谷くんに会いたくてね‥』
『でも、日番谷くん毎日残業で疲れてそうで‥お部屋にもいけなくて、ね‥?』
『そしたら、乱菊さんが‥』
『‥雛森』
雛森の傍へと移動する。
‥難しいことなんかじゃなかった。雛森も俺も、同じ想いを抱いてたんだ‥‥。
愛しさのまま、顔を近づけた‥‥
カサリ。
『‥‥‥。』
目の前には、真っ白な紙。
雛森が紙‥書類の向こうから顔を覗かせ、慌てながら言った。
『ご、ごめんね日番谷くんっ‥!あたし今ちょっと‥!心臓が、爆発しそう‥っ』
『‥俺だって、もたねえよ‥』
‥雛森にとっては残念なことに、今回ばかりは待てない。
悪い、と呟き口づけようとしたら、再び書類が当たった。
‥けれど、今度は‥柔らかい。
『今はこれで、我慢して‥?』
頬を染めながら言う雛森の言葉で、書類ごしに口づけられたのだと、分かった。
『‥無理、逆に我慢できない』
『ふぇぇ!?』
書類ごしのキス。
お前にとっては牽制のキス。
‥‥俺にとっては誘いのキスなんだけど。
‐fin‐
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