(旅人パロ)
 
 
激しく降る雪の向こう、一軒の家が見えた。
 
 
少年は布団にもぐり込んで、冷え込む空気に身を震わせていた。
 
突然玄関の方で扉を叩く音が聞こえ、びくり、と少年は思わず肩を揺らした。
しかし、少年は次の瞬間にはぴくりと反応すると、玄関へと走り出す。
 
『‥--‥‥-!?』
 
その時名前を呼んだようだが、耳にノイズがかかってよく聞こえなかった。
 
扉を開けると、少女が雪まみれで立っていた。少女は笑って何か言ったが、“俺”にはやはり分からなかった。
 
少女は誰だ?‥少年は誰だ?
 
そんなことを考えている間に、少女は少年の手を掴むとあっという間に寝室まで駆けていく。そして、寒いとでも言うように毛布にくるまった。
‥‥少女は少年と手を絡めたままだ。当然、少年も隣に倒れこむ。
 
少年は顔を赤くして慌てたが、少女がしっかり少年を抱きしめると、諦めたように動きを緩めていった。すぐに寝息をたて始めた少女の頬には、うっすら涙のあとが残っていた。
 
見ている自分には分からないが、少年には理由が分かっているのかもしれない。
 
 
 
 
‥そして少年は、少女の首筋あたりに口づけを落とす。背の低い少年にとっては一番口づけやすい位置なのだろう。
 
当たり前のように、ただ、そう思った。
 
そう思った瞬間、耳にかかっていたノイズが消えた。
 
 
『‥俺は、お前と一緒にいる』
 
 
初めて、はっきり聞こえた言葉。
その声を聞いてようやく気付いた。
 
 
“この少年は俺だ−‥”
 
 
 
 
 
 
うっすら目を開けると、数日ぶりに毛布と呼べるものに包まれていた。横には、毛布を借りてきたらしい雛森が寝ている。
‥少し、男女の距離にしては近すぎる気もしたが、今は気にしないことにした。
 
彼女は、半年ほど前から旅を共にしてきた相方だ。きちんとした約束などしていないが、自然と一緒に旅していた。
不思議と嫌な気はしなかった。半年前までは確かに、“見知らぬ他人”であったはずなのに。
 
 
『‥‥‥』
 
ふと、夢の光景が頭を過る。
 
過った瞬間、自然に雛森の首筋へと唇を押しあてていた。‥軽く、軽く。可愛い口づけを。
 
雛森が軽く身をよじり、ハッと日番谷は我に返る。
何をしているのだ、と自分を叱咤した。
 
‥けれど。“俺”は今。
 
 
 
(夢の中の少女は、彼女だった気がした。)
 
‐fin‐

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