桃の、するっと頬をなぞってくる指先が好きだ。
俺より高い位置から見てくる瞳さえ愛しい。
俺の両手と背中は壁に押し付けられる。
『日番谷‥くん‥』
息が漏れるような声に俺の喉は音を鳴らして、近づく瞳を見つめた。
そのまま滑って心臓に下りてくる唇は甘く、俺の肌に噛みつく。焼けるような痛みは心地好よく、滲んだ鮮血を俺の肌と彼女の口元に残した。
あぁ欲しい、もっと。もっと俺を求めろよ。
これが矛盾している?それこそ馬鹿げた考えだ。
薄い皮膚なんて喰い破れ、もっと、もっと近づいてこい。
だって桃、お前は俺が好きだろう?
執着されることに悦びを感じて、今度は俺を縛る側に立った桃。
束縛される感覚が、お互いを支配する。お前の胸元に見える噛み痕は俺のもの。
『ッ‥』
俺の胸の噛み痕はお前のもの。
お前には俺だけいればいい。実に単純明快な考えだ。
お前に俺以外の存在などいてはいけない。
お互いだけで成り立っていた世界に戻ろうじゃないか。
絡み合う指先も貪り合う唇もお互いの口内にいきわたる血の味も。
全部全部俺のもの。
その全てがお前のもの。
心臓に近い、血を繋ぐ。
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