無言のまま、二人は並んで歩く。学校は、すぐに見えてきた。
 
『あ、あの‥日番谷くん。ありがとね』
 
『‥いえ』
 
声が普段よりかすれているような気がしたが、風邪でもひいているのか。桃が熱をはかろうと手を伸ばすと驚いた顔をされた。
 
『な、なんすか、先輩‥』
 
うわずった声は、傘の下という狭い空間の中で響いて消える。
 
『風邪でもひいてるのかな、と思って。‥日番谷くん、部活の時となんだか様子が違うし‥』
 
“傘に入れてくれるなんてびっくりしちゃった”
桃がそう呟いたら、プレゼントの代わりです、と返された。
 
『‥雛森先輩の誕生日だ、って朽木先輩から聞いたんで』
 
『‥‥あぁ!なるほ‥ど‥?』
 
 
誕生日。確かに今日‥6月3日は桃の生まれた日。
 
‥しかし。やはり首をかしげる。女の子に、誕生日を理由に傘を差し出す。‥果たして日番谷はこんな人物だっただろうか?
 
 
答えは否のはずなのだ。
 
 
 
 
『‥先輩』
 
『ん?』
 
『いや、なんでもないです』
 
桃と目を合わせて、すぐにそらす。少なくとも今の日番谷は、余裕なく見えた。
 
 
玄関にタン、と足を乗せる。バサッと傘を閉じる音がする。妙に短く感じた登校時間は、終わりを告げた。
 
 
 

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