問題提起:幸せってどんな時?






『あちぃ‥』
 
『涼しー‥』
 
 
チャリン。
 
チャリーン‥。



‐自転車。‐


‥‥‥。

自転車の音。短くなってきた影。止まりかけながらも、坂道を登る。
 
緩めのカーブがかかったこの道では、風が顔を撫でるたびにざわざわと葉が揺れる。
 
 
『そりゃ、お前は涼しいだろうよ‥。俺が漕いでんだから』
 
後ろに幼馴染みの桃を乗せて、自転車で走る。
 
毎日、同じ。自転車は桃ので、漕ぐのは俺。
 
 
二人乗りは駄目らしいって確かばあちゃんが言ってたっけ‥、やっぱり誰かに見つかったら、怒られんのかな。
 
 
『頑張れ、シロちゃーん!』
 
 
真後ろからのんきな声援。
 
 
やる気が出るのか出ないのかわからないようなそれは、俺の汗の滲んだカッターシャツに吸い込まれていった。
 
‥同時に、怒られるとかどうとかいうのも、忘れてしまった。
 
 
 
 
 
 
‥とりあえず今日は、晴れらしい。
雲はどこに行った、雲は。そんなことを呟いてみる。
 
 
この銀に近い髪はあまり太陽の熱を吸収しないが。
 
それでも頭の天辺にさんさんと太陽の光を浴び続けているのは気分の良いことではない。

 
“涼しい”なんて言ってるが、桃に至っては綺麗な黒髪だから、今なら頭で玉子焼きが焼けるんじゃないだろうか。

‥笑えない冗談だと思う。



家までまだある。
とりあえず、どこか屋内。クーラーをくれ、俺達に。
 
 
 
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