雨のち 名前変換 雨はあまり好きではない。外が暗いとなんとなく気分も暗くなるし、あちらこちらで不満があがる。 半兵衛と吉継は湿気だとか気温差だとかで不調だったり不快だったり。三成は前髪がまとまらなくて視界に入って邪魔だと言ってたり。充分尖った前髪だと思うけど。普段から物騒なことばっかり言うんだから、前髪くらい切ればいいのに。むしろ切ってあげるのに、まっすぐ。 「夏葵―」 「どうしたの左近?」 左近は、外に出れないだの雨なんて嫌いだだの文句を言ってくるのが常。他がおとなしいから左近が騒ぐの見てるのは楽しいし、できることなら叶えてあげたいけど、自然現象だからねぇ。 「慶次さんとこ行ってもいい?」 「賭け事だけなら左近のお金が増えても減ってもいいけど、この前盛り上がりすぎて喧嘩までしてまつさんに迷惑かけたばっかりじゃない」 「じゃ、呼ぶのは?」 「きっと秀吉と話すのに忙しくなるよ?」 「でも今秀吉様出かけてていな 『おかえり秀吉!濡れているだろうから早く着替えて…』 左近の顔が苦虫を噛み潰したようになる。可愛いなぁ、本当によく顔にでるんだから。 「半兵衛は秀吉相手だと人が変わったように話すよね」 「俺、あんなに話しかけたら怒られちまうよ」 「三成に?」 「もう少し反応がいただけたら嬉しいんだけど。あ、でも、聞いてくださってはいるんすよ?この前だって…」 喜々として語り始める。ここの人は例外なく上司が好きだ。上司が同じくらいそれに答えているかは分からないけれど。来たばかりの時は、吉継もいるしどうなるかと思ったけどいらない心配だったし。秀吉と半兵衛が微笑ましそうに3人を見ているのも最近見かけるようになった。 『左近。左近はいるか』 三成が呼ぶ声が聞こえてきた途端、目がキラキラする左近。尻尾があったら確実に振っているだろうなといつも思う。 「何ですか三成様―!!」 鉄砲玉のようにとんでいった。残像とか残りそうだけど。もしくは分身とか。 玄関の音がしたのでどこかへ出かけたらしい。雨の様子でも見ようかと私も出ようとするとすっと吉継が入ってきた。 「今度は吉継?一緒に行かなかったんだ」 「忌々しい彼奴が妨ぐゆえ、われは留守役よ」 一瞬左近かと思って焦ったけど、違う。雨だ。吉継自身も雨の中動くのはなるべく避けてるみたいだし、それを知ってる三成が吉継を連れて行くとは考えにくい。 「雨、好きじゃないな」 「夜の星見もできぬ」 「そうね」 と、外から足音がする。秀吉か半兵衛か…これは両方いるのか。2人で歩くと、半兵衛の足音が装飾符みたいになるからすぐ分かる。 「大谷くんはここかい?」 「今日はみんなここに来るのね。あ、秀吉、頭気をつけてね」 高身長(過ぎる)この家のメンバーはよくぶつけるし、秀吉は中でも大きいから大丈夫だと知っていてもついつい言ってしまう。 「相手を探して、ね」 「太閤の御前で賢人と相手とは、われも休まる間がなかろうて」 半兵衛の持つ将棋を見ながらそう言うも、広げ始めるといそいそと自陣の駒を並べて楽しそうだ。私も秀吉の隣に移動して観戦することにした。 『帰ったぞ』『ただいまっすー!』 もう帰って来たの?え、1時間も経ってる?あんまり将棋に集中しすぎて時間が過ぎたのに気づいてなかったのか…まさに矢のように去る時間…。 「客だ」 言いながらふすまを開ける三成の後ろには 「皆さんお揃いで」 「お久しぶりでございます」 「又兵衛!官兵衛も!何で連絡もいれないで…夕飯どうしよう?」 予定にない来客で戸惑う。そりゃ、いつでも来ていいんだよ、とは言ってあるけど、それにしても急じゃ…。 「夏葵さん、俺らの分は適当に買ってきてもいいですからお気になさらずー」 「何言ってんの、せっかく一緒に食べるのにそれじゃ味気ないでしょ!」 「なれば、ほれ」 「おぉー!自由だー!!」 吉継が手枷の鍵を外す。思い切り腕を広げてみたり後ろへ伸ばしたり、あ、又兵衛に当たりそうになってる。 「小生が夏葵殿のお供をすればいいのだな!」 動けるようになって嬉しそうにしている官兵衛の後ろで又兵衛が閻魔帳を取り出し、そのさらに後ろで半兵衛の視線が絶対零度に達す。せっかくだから仲良くしてほしいんだけど、又兵衛は癖になってるし半兵衛もなかなか頑固だし…。 「…はぁ」 「どうしたのだ夏葵」 「みんなで仲良くご飯が食べたいなって」 「うむ。我が何とかしておこう。夏葵は夕餉のことのみ考えていればよい」 「ありがとう秀吉!じゃ、行こうか官兵衛。あ、半兵衛は又兵衛のこといじめたらダメよ」 「…。どうしてそんなことわざわざ言うんだい、夏葵くん?もちろんしないさ」 そこで残念そうな顔をするからです。あと間があったのが気になります。ま、秀吉に任せとけば大丈夫だと思うけど。 「では、行ってきまーす」 先に出ていた官兵衛の上に、少しだけ太陽が覗きだしていた。 集合させようと思ったら最初に考えてたのとだいぶずれました。名前を全員に呼んでもらおうと思ったんですが、吉継は挫折して、三成はすっかり忘れ(ry BASARA TOPへ/小説TOPへ |