死ぬまでいてくれるってことですか? 目の前でいつものように真面目な顔して三成先輩が課題してる。 学年が上がると、しなきゃいけないものも増えるんかね?俺より要領よく終わらせられそうの気がするんだけど。 「三成せんぱーい、まだですかー?」 「…」 初めのうちは構ってくれてたけど、言いすぎて呆れられたらしくてもう大体無視。いつもいつもそんなに一緒にいれるわけでもねぇし、いられるだけでも…と思ってたのは構ってもらえなくなってから少しの間だけで、もう、早く終わってほしい。 暇だから、いつもは開かないけど辞書とか…あ、やべ。 「左近」 カバーを落として、先輩が嫌な顔をする。頭を下げてから拾い上げて落ちなそうなところへ置いた。普段読むどれよりも重い本を机の上でぱらぱらめくってみても、特に読みたいところがあるわけでもねぇし、文も堅苦しいし暇潰せなそう。ちらっと様子をうかがってみても、変わらず真剣になんかやってるし。んー…あ。 「ら、り、る、れ…」 小声でつぶやきながらページを進め、『恋愛』の項を読む。けど、出だしからムッとする文だ。『特定の異性に対して』 「えー」 「どうした?」 不満げに声をもらす俺に、手を止めてこっちを見てくる三成先輩。辞書をひっくり返して先輩に見せる。 「ここ、これ。俺らのはなんだって言うんすかねー」 「片方だけならどうだ」 「えっと、『恋』…はダメっす。…『愛』は…なんか、違うような」 すぐ隣に行って手元を見せながら両方調べたがしっくりこない。やっぱり俺ら普通じゃねーのかなーと思っていたら、三成先輩が俺の方を向いて言った。 「広辞苑を開いたことはあるか」 辞書を開くこともないのに広辞苑なんて開くわけがない。ないっす、というと、そうか、とうなずいて、言葉を続けた。 「広辞苑における『恋』とは『一緒に生活できない人や亡くなった人に強く惹かれて、切なく思うこと』であるらしい」 「え」 「これなら、私に恋心を抱けそうだな」 「なっ」 あらためて言われると照れるっすよ、三成先輩。しれっと言われたのもそうだし、てか、先輩普段そんな単語口にしないのにこういう時ばっかりあなたって人は! 「…でも、切ないんじゃ寂しいっす」 「…ふん」 また横顔に戻る。これ以上は怒られると経験で知ってる。邪魔しないようにしぶしぶ離れようとすると 「名がなくても良ければ大事にしてやる」 半分立ちかけた姿勢のまま思わず止まっちまった俺と比べて、この人は表情1つ変えやしない。すとんと隣に座りながら、この勉強が終わるまでに、三成先輩を照れさせる手段を考えるべく頭をフル回転させることを決めた。 Twitterでまわってきた辞書関連のものから派生。本当はもっと幸せな答えがあった気がしないでもないです。 BASARA TOPへ/小説TOPへ |