プレゼント

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毎年イブに開かれるクリスマス会は、どうやってプレゼントをばれないように運ぶか考えるところから始まる。信長なんかは宅配に頼るから何も問題ないらしいが、そんなことに使う余裕はない。懐に忍ばせられる大きさのものをそっと落とさないように運ぶのである。
「蘭丸―、プレゼントもう準備したー?」
「おう、楽しみにしてていいぞ!」
蘭丸からもらうとは決まってないんだけど、なぜかボクに言ってくる蘭丸。どう返すのかもわかんないから、当たり障りなさそうな言葉を返す。
「濃姫のとかも気になるんだよねー」
「そう、だな」
早いうちからていねいに飾られたツリーと、ケーキやチキンなどの食事が用意された部屋で、思わずテンションが上がる。
でも、こんな会話ができるのも今のうちだということは、すでに学んだ。なぜならそのうち、嫌な予感しかしない笑顔を浮かべた光秀が登場するからだ。
「ふふふ、お楽しみの時間ですよ」
押してきた台車の布をばさっと音がたつくらい勢いよく取り去る。布の下から出てきたいなりずしから、うっ、と声を上げて視線を外す勝家。
「あ、勝家も結局いるじゃーん。大はずれ引いたのによく来たね」
「呼ばれたら来ないわけにはいきませんので…」
さすが勝家だなぁ。去年は激辛引いたうえにボクからのびっくり箱から攻撃されてた気がするけど、呼ばれたのは素直に嬉しいんだろうなぁ。
「今年はどんな味になっているの?」
「これだ」
かに、五目、通常、わさび、激甘、激辛。この順番とプレゼントの番号にしたがってもらえるものが決まってくるのだ。ちなみに、いなりずしを選ぶ順番は信長の独断で決まる。
「最初はお前に譲ってやろう」
「ありがたく」
こわばったようにも見える勝家がいなりずしを前にして真剣に選ぶ様子は、だいぶシュール。やけに信長と光秀がにやついてるから怖くもある。
勝家が長々と考えたあとに信長と濃姫がさらっと選び、わーきゃー言いながらボクと蘭丸がお互いに選び合い、残り物を光秀が食べることになった。
「せーの、で、いきますよ?せーの」
一斉に口の中にいなりずしが消える。数秒の間があって
「あっっまい!」
「……!!」
「おいしーい」
蘭丸とボクの声が重なって、声にならない声を発しながら濃姫が水を飲み込む。光秀は、今年もまた信長がハズレを引かないので少しつまらなそうだ。
「今年は助かりました…。では、プレゼントの方に行きましょうか」
ほっとした顔で勝家が隣の部屋へのドアを開ける。大きさもバラバラなプレゼントたちが、もらわれるのを待っている部屋だ。
それぞれが自分の番号を確認して、プレゼントを開けていく。ボクは(たぶん信長からの)大きめのきりんをもらった。置き場所には困るけど、上に乗っても大丈夫らしいからけっこう嬉しい。
「今年のはず…今年光秀からもらったのは信長様ですね」
「これは、なんだ」
「真ん中押すと笑うんですよ、愛らしいでしょう?」
どくろのぬいぐるみブローチ。真ん中と言われてとりあえず押してみる信長だが、顔が思いきり潰れるのでなんとも後味が悪い。時間差で流れる笑い声も、魔女の笑いみたいだ。少し止まったあと、信長は容赦なくゴミ箱に放り込んだ。
そのあとは、料理食べたり罰のないゲームしたり楽しんで、飽きたから解散しよう、という信長の発言でお開きになった。本当にマイペースな人だ、と改めて思う。
「じゃ、ボクも自分の部屋に、っと」
「椿ちょっといい、か」
戻ろうとしたら蘭丸に止められた。なんだろ?わざわざこのタイミングで話すこともないと思うんだけど。
「こ、これ、部屋に戻ってから開けろよ」
「ん?今じゃだめなの?」
「え、あ、えっと、じゃあ、蘭丸が戻る!また明日な!」
「あ、うん。また明日?」
背を向けて走り去っていった。なんかいつもと違うなー、と思いながらもらった封筒を開けると、明日の日付の遊園地のチケットが入っていた。
「なんだこれ?」
「椿ちゃん、今もらったの?蘭丸くん相当悩んでたから、明日が楽しみね」
「悩んで…?」
「感想、楽しみにしてるわ」
おやすみ、と言って、よくわからないまま濃姫が部屋に戻っていった。
もう一度チケットに視線を落として、紙が挟まっていることに気づく。開いてみて、濃姫の言っていた意味をようやく理解して、そのまま紙をしまった。
『椿のことが好きです』
それだけ書かれた小さな紙のせいで、今年のクリスマスはいつもよりあたふたとしそうです。


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