いい加減にしてくださいませ 名前変換 まつさんの鶴の一声で、数日後に控えた引っ越しの準備にかかった、オレと利家と慶次。元々そんなに物持つほうじゃないだろうからさっと終わると思ってたんだが、予想は大胆に外れることになった。 「慶次、意外と色々持ってるんだな」 オレのよりだいぶ積み上がっていくダンボールを見て言った。 「見かけて気に入ったもん買っちまう性分で。夢吉のお気に入りとかもあるし」 「ほー」 確かに夢吉が小さい腕いっぱいに抱えてるのもよく見かける気がしないでもないが、あれって引っ越しで邪魔になるほどたまるのか? 「あとは、貰いもんも結構あるな」 「もらいもん?」 「貰ったもんて、その人の想いがこもってると思うとなかなか捨てられなくてなー」 慶次が選ばないであろうデザインの髪飾りを追加でダンボールに入れるのを見て、 「それって、女の子からもらったやつ?」 からかい混じりにきいてみる。直後の答えで聞かなきゃよかったと後悔したけど。 「これ?そうだよ。初恋ですとか言われたから断るのためらった」 「あー……」 「彰堵、貰ったりしねーの?」 「…あんまり、もらわないかなぁ…」 モテる奴の発言って攻撃力高いよな…オレの防御力が低すぎる?いやいやそれを考えたらいけない。オレみたいな奴のほうがきっと多いはずだ。 「ん?そういえば利家は?」 「あぁ、トシは…見たほうが早いかな」 運ぶ荷物が積まれている部屋から、慶次と二人でそっちへ移動。移動してる間に聞こえてきた声で、すでになんとなく状況がわかってきた。 「犬千代様!それはこちらの箱でございます!」 「そうか、そっちにまとまっているのか」 部屋につくと、予想通りの光景が広がっていた。物を出すだけ出して、箱詰めが全然進んでいないようで、まさに足の踏み場がない。どうにかどかしたらしい空間で、まつさんが膝立ちで片付けと指示出しをしていた。 「…すごい部屋だな」 「トシ片付け苦手だからなー」 「…苦手、ね…」 「順番に片付けていけば、このような事にはならないのですよ?大掃除の時にも申し上げましたでしょう」 一度聞いててもこれか…というのは心のうちに秘めておいたほうがいいんだろうな、きっと。 「服なら服だけ、出してしまえばいいんだよ」 「なるほど!!」 「違う!夏物と冬物ごっちゃにしたらわかりにくいだろ!」 セーターと半袖シャツをまとめた利家に、すかさず慶次から注意が。そのまま出しただけだと思ってたけど、もしかしてタンスの中がもうごちゃごちゃだったのか? 「お二人に任せて、私は他の準備をしていてもいいでしょうか?」 「あ、うん。任せてくださいまつさん」 オレたちの部屋以外は大体まつさんにやってもらっってるからそう言って見送ったけど、この部屋を片付けるのは骨が折れそうだ。 「じゃあ、オレが服やるから、慶次小物ね。利家は皿とか茶碗とか、食器類やってくれ」 「了解!」 「分かった!」 面倒な小物を爆発するべきモテ男に任せてしまえば、夏冬に分けるだけだしそんなに大変でもないだろう。利家が冬服着てるのが全く思い浮かばないけど持ってたんだなー。 黙々と片付けていく。衣擦れの音とガチャガチャいう音と、たまに鼻歌。…ガチャガチャ? 「って利家!食器そのまま入れたら割れちゃうって!!」 ダンボールに個人の部屋の荷物とは思えない数の食器がむき出しで重なっている。…ここキッチンとかじゃないよね? 「新聞紙でくるむのを忘れてるよ」 「おぉ、そうか新聞しか。確か向こうn ガッシャーン!!取りに行こうとした足元でコップが割れた。それを片付けようとした利家は破片で指を切り、切った指をくわえながら照れ笑い。 「すまんなぁ、また仕事が増えてしまった」 「…利家はまつさんの手伝…(迷惑かけそうだなぁ…)あー、ジョギングでもしててくれ」 「いいのか!!実は片付けていたら体が動かしたくなってな。ちょっと走ってくる!!」 今までの倍くらい明るい表情で外へ飛び出していった。 「本当に苦手なんだなこういうの」 「毎回毎回、結局は走ってきてくれって、な。俺もまつ姉ちゃんもお手上げ」 お手上げ、と呆れたような口調で言いながらも、慶次の顔は嫌そうではない。 「元々トシはあんな感じだし、もう慣れたっていうか」 オレじゃ、きっと身内に寛容的なっていうか大人な対応はできないだろうなと思って、改めて慶次をいい奴認定した。爆発すべき、とか悪いこと考えちゃったなぁ。 「彰堵もいるしな」 「…は?」 「ってことで、俺もちょっくら出かけてくるわ!あとよろしくな!!」 前言撤回。 「オレに押し付けていくんじゃねぇよやっぱお前なんか爆発しろおおおおおおおおおお!!!」 叫んだところで帰ってこないのは重々承知だが。叫ばずにはいられないだろこれ。まだオレ自分の部屋も完全には終わってないうちに手伝ってんだぞ? 「何を叫んでいるのですか!?」 やっべ、まつさん怒ってる!? このままオレも逃げようかと思ったけど、残念ながらまつさんから逃げ切るスキルはまだ未習得である。なんでオレばっかり怒られるんだよちくしょう! 読み返してみたら意外と長くて驚きました。利家の部屋にある食器類は、夫婦揃いで以前買ったけど、新しくしたからもう使ってないやつ、だといいなっていう妄想。 BASARATOPへ/小説TOPへ |