もうすぐ 名前変換 少しずつ芽がではじめた並木道を、季節外れに緑な頭と目的地に向かっている。今日は、ボクも緑のパーカー着てるから色だけお揃い気分。ほんとは、色違いのお揃いとかしてみたいとは言い出せずにいる。 「もう着く?」 「あと少しだって。焦るな焦るな」 いつもより口数少ないのに、いつも以上に表情とか雰囲気?とか伝わってくる。きっと気に入るよって言うばっかりでどこへ行くかも教えてくれない井浦についていくのは、ボクをそこへ連れていくのが心底嬉しそうだから。 「ほら、ここ」 「ほー」 「つったってないで入る!」 落ち着いた感じの店構えの、ちょっと重たい扉を押してもらって中へ。BGMもかかってない、個人営業ですって感じの店。さっきまでお客さんが来てたみたいで、片しきってない皿がまだ机の上にあった。 「ここのパンケーキがうまいらしくてさ」 「井浦は店でパンケーキ食べるのか。おしゃれうらか」 「俺は来ないけど、吉川さんがこの前来たらしくて」 「ユキちゃんなら来そうってか知ってそう」 「椿好きかなーって。シロップとかジャムとか選べるっぽいけどどうする?」 さっと見てはちみつを選択。生クリームも迷ったけど今回は先送りにする。井浦のいちごジャムと一緒に頼んで、待つこと15分。 「うわぁ」 「これ結構あるな」 思ったより厚めのパンケーキにバターが乗ってて、家で焼くのと全然違う。そっとフォークをあててナイフでざっくり切る。焼き目だけしっかりしてるけど中はふわふわで、すとんとナイフが落ちた。はちみつも垂らして食べる。 「おいしい!」 「ほんと、幸せそうに食べるよな、椿」 「おいしいものとかわいいものは正義だよ!」 「椿が食べてるとうまそうに見えるもんなあ」 「井浦もこっち食べる?」 ひと口サイズをフォークで刺して井浦の方へ。ちょっと前のめり気味にして食べて、にこっとした。 「やっぱうまいや」 「井浦のもちょーだい?」 同じようにして刺してナイフでジャム乗っけて、差し出されたパンケーキをぱくっと口にしたところで、扉の開く音がした。 「ヒューヒュー」 「井浦くん今日来てたんだねー」 「バカっぷるかお前ら」 「あの、邪魔なら帰りますから…」 紫・黒・赤と、やなぎん。どうやらもともと向こうも来ようと思っていたらしい。 「あかねは全然気にしなくていいから!あと石川は黙れ!!」 「井浦くん、そんなに大声出したら椿が驚くだろ」 「仙石さんとこも!バカっぷるじゃん!」 若干会話が噛み合ってない。2人きりは邪魔されちゃったけど、男子で集まってる時の井浦も好きだなぁと思いながら、いちごジャムの味をゆっくり楽しんだ。 堀宮TOPへ/小説TOPへ |