現代版人魚姫物語




※現パロ


その同棲生活は突然に始まった。

陸奥守は小説に出てきそうな六畳半くらいの部屋に住んでいたのだけれど、そこに突然清光が転がり込んできたのだ。きっと様々な経緯があったのだろうけれど、陸奥守はそのことをうまく思い出せない。けれど二人は同棲しており、セックスもしていた。

陸奥守は別段ゲイというわけではなかったのだけれど、清光には不思議な魅力があって、その清光が爪をしゃこしゃこと研いでいる時に妙な胸の高まりと股間の高まりを感じて、それをそのまま清光にぶつけてしまったのだ。

けれどその津波のような高まりを清光はきちんと受け止め、陸奥守をちゃんと迎え入れた。それは不思議な感覚のするセックスだった。気持ちのいいセックスなのに、どちらも別々のことをしているようで、そのくせマスタベーションとは絶対的に違っていて、激しくもなく、静かでもなかった。そして、陸奥守が惰性のようにキスをしようとしたら、それだけはそっと整えられたひとさし指で断られた。けれどそのことについて、陸奥守がむっとすることはなかった。ただそういうことなのだと、すとんと、腹におさまった。けれどもそれはどうにも、気になった。からだを重ねるたんびに、清光の胎を圧迫するたんびに、そのことは陸奥守のはらを圧迫するようになった。

だから、日光が眩しい昼間、清光がすうっとうつくしく整えられた爪に赤をのせている時、ふと、陸奥守は清光にキスをした。その妻紅は歪に歪み、清光はうれしくも悲しい顔になった。陸奥守は清光にひどいことをしたという気持ちになって、「すまん」と、一言だけ謝った。そうしてまばたきをひとつすると、ふつりと頭のなにかが途切れて、次にまばたきをしたら、六畳半の部屋に、ひとりぎりだった。そうして、自分が何をしていたのかわからずに、「清光?」と、口にした。人生でもう二度と口にしない、最後の言葉を。


END

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