彼を追いかけるのはアリスの役目でありまして。(5/5)
「…わあ…」
お洒落な洋服が沢山あるお店を見付けた。思わず足を止めて、ウインドウを食い入るように見つめる。ネオンカラーを使った素敵なデザイン。
お店の中にいる笑顔のお兄さんと目が会って、へらりと笑い返した時だった。
「はいはあ〜いww迷子の仔猫さ〜www…ん!!」
「ぐえっ」
ゴチ、と鈍い音がして額が目の前のガラスにめり込んだ。
「ぉ、おお…」
半泣きで痛さに呻いていると、背後でせせら笑う声がした。
ゆっくり頭を上げると、ガラス越しに黒い笑みと目が合う。
「あ、駒村くん見付けた」
「俺が見付けたんだ、よ!」
「ぎゃ」
後頭部にチョップを受けて、ゴツ、とさっきより鈍い音を立ててガラスにめり込んでしまった。お店のお兄さんが心配そうにアワアワしてる。
いつも以上に機嫌が悪そうな気がして縮こまっていると、愉しげに鼻で笑っていた。目は恐ろしいくらい据わっている。
「あのさあ〜w人ん家に来るならさっさと来てさっさと出て行ってくんない?ww何道草食ってんの?バカなの?wwwご足労させてくれやがってどうもありがとうなんて言うわけないんだよねクソワロwww」
口角を上げてニヒルに笑いながら言われて、慌てて弁解する。
「でも、早く来られても迷惑って」
「朝っぱらから叩き起こされて大して汚れてもいない部屋の掃除されてケーキ大量に買いに行かされてクッキー焼かされて大量のお菓子やジュースと一緒に約束の時間の三時間半前から部屋で待機させられる気持ちになってくれんの?」
「ごめんね…」
心底鬱陶しそうに一息で言われて、ひたすら謝ることになってしまった。
私、駒村くんのお母さんみたいに沢山お菓子用意してないけど、大丈夫だろうか。
「食べきれなかったら、皆さんで」
「はあ〜?」
何でこんなことも分かんないの?みたいに見下されて、え、と戸惑った。駒村くんは有無を言わせない口調で言い切った。
「食べきってよね。何で俺があんたが来るからって作らされた大量のクッキーなんか食べなきゃいけないわけえ?めんどくさい。ゲームしてたらちょっと焦げたし」
「えぇっ!?」
「寄り道しないでよねグズ」
いつの間にか私が持っていた手土産をひょいと掴んで、すたすたと駒村くんが歩き出す。慌てて追いかけてもやっぱり悪態を吐かれた。
少し早足になりながら、前を向いたままの横顔に話しかける。
「それ、ユニランゼリーだよ。形がユニランなんだ」
「ふうん」
「ゼリーで良かった?」
「何でもいーんじゃないの」
「駒村くんゼリー好きだった?」
「…何で?」
「え?駒村くんと遊ぶから、駒村くんの好きなものにしようと思って、」
ジロ、と此方に、いつもの感情の読めない茶褐色の目が向けられた。
全部お見通しのような目に何と無く取り繕う言葉が出てこない。
「…ごめん…私も食べたかった…」
「バカじゃないのw」
ニヤリと唇の端を上げた駒村くんが、帽子の鍔を少し下ろして笑った。
いつも以上に機嫌が良さそうになったから、良かったと思う。
ユニランゼリー効果と呼ぶことにする。
「駒村くんの全国図鑑早く見たい…!」
「001から全部言えたらい〜よ〜ww」
「途中休憩無しで良かったら、二時間で説明するよ!」
「…は?」
彼、あの子呼んだってよ。
「ポケオタ乙www」
「ボケおったおつ?」
「ぷぎゃーwwwww」
(みんなはあの子に逢えました?)
2013.8.22
欠陥ラヂオ5thおめでとう!!
愛しのれっくすに捧げ!
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