▼郁がカロスへ郁よ!
2014/09/07 00:05
▼Xyは3年後
「トレンディデビュー」
郁は歓喜した。感極まって涙した。漸く地方を出られるくらいの資金が貯まったのだ。
バイトに明け暮れ、路上でイラストを売ったり、アーティやカミツレの紹介で絵の仕事をしたり、…お小遣いをもらったりもした。
けれどもやはり、最も資金に貢献したのはポケモンバトルの報酬だろう。自分がもう少し、もっと強くなれたなら、早く旅行へ行けたかもしれない。
何はともあれ、やったあ、と鏡の前で、早速荷造りを始めた。善は急げだ。
師匠アーティの紹介で、来週からホームステイ先が決まっている。
もう半年は前に、文無しの自分を鼻で笑って、トレンディーな街へ旅立ってしまった人を思い出す。待たないからね、とあっさり、優しげな声の割にシビアな台詞を吐いて行ってしまった。
きっと、逢えるだろう。
新しい生活は暫く続くけれど、今の自分を試してみたい。彼は何と言うだろうか。
馬鹿にされたとしても、すぐに追い付いてみせる。
いざゆかんと気合い十二分に、額に鉢巻きな気分で踏み込んだ先のトレンディー。ビルのディスプレイで淡々と、彼がとっくの昔にカロス地方殿堂入りしていたことを告げるのであった。
今現在は富豪にバトルを挑みまくり、ありとあらゆる金目のモノを強奪しているらしい。
ああ元気そうだなあ、と、嬉しげに郁は一言頷いた。
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