幸あれ



*オリキャラ語り注意






(…ゆき)

廊下の窓の向こうに見知った姿を見つけた俺は、ついその姿を目で追いかけた。
隣にいるのは何かと有名な1年の黄瀬。
あいつに限らずバスケ部の連中といると、決して小さくない幸が小さく見えるから不思議だ。
まあ、それはさておき。


「…なんか」

変わったな、と思った。
言わずもがな、幸……笠松幸男の話だ。


去年の夏からこっち、あいつはずっとピンと張った糸みたいだった。
いつ切れるか分からないような、そんなギリギリの状態で全力を尽くす。
とても大丈夫なんかじゃないだろうに、それでも無理を貫き通す。
真っ直ぐで、真剣で。
……昔から、幸がそういう奴だということを、俺は知ってた。

だけど、幼なじみってやつは何にもできやしないんだ。
見ていることしかできない。
幸が擦り切れてしまわない事を祈りながら、ただ見ているだけだ。
あいつを救う術を持っているのは、きっと。


見下ろした先には、黄瀬に肩パンを見舞う幸がいて。
やっぱりな、と俺は息を吐いた。
あいつを救えるのは、結局あいつみたいにバスケが好きな…バスケ馬鹿なんだ。

どうやら幸は、もう大丈夫みたいだなと安堵して俺は視線を逸らそうとした時。
ふと、幸の表情が見えた。

「……ああ」

なるほど。
妙に合点がいって、頭をガシガシ掻きながら俺は窓に背を向けた。
無意識に上がった口角を隠せぬまま、部長早く!と俺を呼ぶ後輩の方へ歩き出した。

幸せそうな顔しやがって。

何かいいことあったんですか、なんて言葉は否定も肯定もしてやらない。



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黄笠(←)オリキャラ。
この矢印は友情なのかな?こう…俺が一番近かったのになっていう焼きもちみたいな。
去年のIHも絡めつつ…なんだけど、やるならもっとしっかりやりたいIH。
そして幸ちゃんの幼なじみ、名無し君。
せっかくだし、また出したい。ちょっと気に入ってしまった。

12.08.06



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