医者パロ



※なまぬるえろ


おいおい、と人気のない廊下を歩きながらオレは溜め息をつく。
勤務時間は既に終わった。
当直医に引継ぎも済ませたし、あとは着替えさえすれば家に帰れる。
勤務時間ギリギリに急患が入るなんてのは珍しいことでは無いし、終わったら終わったで疲れきって動きたくねーなんてのもざらだ。だからって動かないわけにはいかないから、こうして歩いているわけだが。
それにしても、問題はそこではないのだ。
オペを終えて暫くしたあたりから気づいていた体の奥で熱が燻っているような感覚は、けして初めてではない。
白衣のポケットに両手を突っ込んで歩く体が、心持ち前屈みになってしまうのは仕方の無いことだろう。
「高尾」
とにかく早く帰って、と思ったところで不意に声をかけられ顔を上げた。
「ん、おー緑間センセお疲れ〜」
視界に入ってきた、相変わらず仏頂面な緑頭。
「とりあえずポケットから手を出せ、みっともない」
「へーへー」
オレと同じく外科の緑間真太郎はぶっきらぼうにそう言うと、隣だって歩き出す。
返事をしながらも突っ込んだままの手に、緑間は再び顔をしかめたが気にしないふりでオレは足を進めた。
「緑間センセは今日もう上がり?」
「もう帰るのだよ」
「オレも帰りー、っあ〜〜…マジくたくたよ今日」
さっさと帰ってシャワー浴びてぇわ。
そう言いかけた所で緑間の足がぴたりと止まった。
「あん?どーした?」
「帰りなら都合がいいのだよ」
「はあ?…って、え?!」
ぐるんと視界が揺れる。
強く腕を引かれたのだと気づいたときには、背中に無機物の冷たさを感じていた。
暗い室内。仮眠室に連れ込まれたのだと認識できたのは暗闇に慣れない目で何となく見つけたベッドのおかげだ。
「…っちょ、何っだよ?!」
「随分苦しそうだと思ってな。疲れマラか」
「うっせ、やめろって…この!」
「ふん」
気づいてやがったのかよ、と歯噛みしながら下半身に伸びてきた手を掴む。
込めたつもりの力が思うように入らなくて引き剥がせず、それどころか緑間のその手はオレの足の間に触れた。
布の上から手を当てられただけでも篭った熱にぞくぞくする。
ずんと重く下腹部の奥にあった熱は、気づいたときよりも明らかに強く主張し始めていた。
弾みだした息に焦りすら感じながら緑間の顔を見上げると、ぱちりと緑の目とかち合った。
「、っ…もう。帰らせろよ…!」
「帰って1人で抜くよりよっぽどイイと思うのだよ」
「そーゆーこっちゃね、ア、あぁ…ッ!」
そっと手に力を込められて、思わず声が跳ねる。
既に先端から滲み出ているらしい先走りで、下着が濡れる感触がした。
逆の手で器用にもオレのズボンを引きおろすと、緑間は直接高ぶっているオレの陰茎を握りこむ。
くちゃくちゃと耳に飛び込んでくる音に、体が震えた。
「高尾、」
オレと緑間がこんなことをするのは初めてではない。
近くにずっといるうちに綯い交ぜになった友情だか愛情だか、なんだかよく分からない何かで、オレ達は不恰好ながら恋人らしき関係になっていた。
「う、ぁっ…」
扉を背に、緑間と向かい合って立たされているオレの腰は意識とは関係なく持ち上がって、自然緑間の胸に顔を擦り付ける形になる。
熱さから逃げるように目の前にある緑間の白衣に縋りついたのは最早反射だ。
「ぁ、…はァ、…っも、真ちゃ」
「イっていいぞ」
「あ、あ、出…っ、んッ…!」
声を何とか抑えようと口を寄せた白衣からは、緑間の匂いがした。
「は、何…真ちゃん、つづき…してぇの?」
息を整えながら見上げた顔は相変わらずの仏頂面だが、目の奥にはらんだ情欲が見える。
少し背伸びして、緑間の首に手を回す。
「誘う気か」
「はは、ジョーダン…誰か来ちまうっつーの」
笑いながらそう言えば緑間は眼鏡を押し上げる。
「そうだな、…帰るのだよ高尾」
おおせのまま、なんて言う気はないが。
「へいへい、しーんちゃん」
オレはほんの少し、意地悪く笑ってやった。

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プライベッター再録。
医者×医者パロです。
余談ですが、術衣×白衣×両手ポケットに突っ込むっていうのが大好きです。

13.06.28→14.02.19 こよし



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