家に帰ると



ゼミの発表の準備に時間がかかり、大学を出る頃には辺りは真っ暗だった。
遅くなるというメールに了解と今夜は鍋だという旨の返信がきていたのを思いだし、自然と足は早まった。
夕飯を作って待っていてくれるというのは想像以上に気分がよくて、最早当たり前になりつつある日常だというのに、つい浮かれてしまう。
がチャリとノブが鳴ったドアをオレは平静な装いで開いた。

「ただいま」
「真ちゃんおかえり、ご飯にする?お風呂にする?それともオレ?」
「………高尾」
そう答えたオレは、自分がぽかんとしている自信があった。
目の前のソファーから立ち上がってオレを出迎えたのは風呂上がりらしい、頭にタオルをかぶった高尾だ。それは間違いないのだが、問題はそこではなくて。
「何なのだよ」
「何が?」
「お前のその格好がだ!なんだその破廉恥極まりない…!」
「はれんちって…彼シャツ?」
ぺたぺた此方へ向かってきた足は裸足なのはもとより、上に視線を動かしていっても足を覆っているものはない。
ヒラヒラと太股を見え隠れさせている見覚えのある布地に、思わずべしんと高尾の頭をはたいた。
「うぎゃッ…痛いって真ちゃん〜」
「さっさと自分の服を着ろ!下も穿け!」
「ちゃんと穿いてんよパンツ」
「見せんでいい!いいからとっとと着替えるのだよ」
こんな風にふざけるのは高尾の専売特許だが、とため息をつきながら、オレは脱いだ上着をハンガーにかける。
その間高尾は唇を尖らせていたが、渋々といった様子でタオルを取り払い、着ているシャツに手をかけ始めた。
「だいたい…そんな格好で寒くはなかったのか?」
「風呂で温まったからへーき」
「風邪を引くぞ、髪も濡れている」
「真ちゃんこそ寒いんじゃねーの、風呂にする?それとも鍋?」
言いながら適当な部屋着に着替えた高尾の髪は、しずくこそ落ちてこないものの、まだかなり湿っていた。
「…お前だな」
「う、え?」
高校時代より格段に軽くなった高尾の体を持ち上げ、抱え込む形でオレはソファーに腰を下ろした。
「なになに、真ちゃん」
「髪を乾かすのだよ」
さっき高尾がほうったタオルを拾い上げ、濡れた髪を拭いてやる。
ふわりと香るシャンプーの匂いは自分と同じものだ。
「ん、いーよ疲れてんだろ」
「大人しく乾かされていればいいのだよ」
そう言って手を動かしていると、とすんと高尾の背中がオレの胸にもたれ掛かった。

高尾は甘え方が下手だ。

「これが終わったら夕飯にするのだよ」
「へいへーい」

机の上にセッティングされたコンロと土鍋。中身の鍋には、まだ手がつけられていない。


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要素ぶっこみすぎて何だかごった煮の乱雑鍋です。
とりあえず彼シャツ+高尾+濡れた髪=エロかわいい=破廉恥がやりたかったことだけは確か。
帰り遅いのちょっと寂しくて真ちゃんの服着てみたり、とはさすがに言えなかったり、ご飯一緒に食べようと思って待ってたり…を普通にしちゃう高尾ちゃんもかわいいと思いました。

13.01.31



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