鬼が笑う



「真ちゃん出来たぜー」
カウンターの奥からエプロンをつけた高尾が、湯気のたつ器二つを手に出てくる。
緑間はこたつの上に載っているものを適当に片付けて場所をあけた。
「お、丁度よかったなぁ」
「この歌手が見たかったのか?」
「そー、いい歌だぜ?」
次が出場順だという女性歌手を見ながら、緑間は差し出された蕎麦の器を受け取った。
「高尾はかき揚げ派なのか」
「ん?あれ、真ちゃんち違うの?」
「うちは海老天なのだよ」
高尾は器の上に乗っかったかき揚げを少しほぐす。
「んじゃあ山菜と、とろろは?」
「とろろは入れないが、山菜は入っているのだよ」
「じゃー次作るときは海老天と山菜にすんな」
次。
その言葉に開きかけた緑間の口は、結局言葉を発さなかった。
いただきまーす、と高尾が手を合わせるのにならって緑間も手を合わせる。
「…うまいのだよ」
「そりゃよかった。…あ、始まる」
緑間の言葉にはにかんだ高尾は、画面の方に目をやった。
しばらくの間、二人してその歌手のラブソングに聞き入っていたが、曲がフェードアウトしていくと緑間が不意に口を開いた。
「…御宮に」
「んー?お宮さん?」
「食べ終わって休憩したら、初詣に行く」
「一緒に?」
「……当たり前なのだよ」
緑間が眼鏡のブリッジを押し上げると、高尾は甘酒も貰い行こうな、と言って笑った。

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2012年最後の緑高です。来年も一緒に年越しするっていう、密かな約束。

12.12.31



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