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「はぁ、っ…ん…ぐ、」
高尾の口からは絶え間なく荒い息が零れ落ちていた。
時に呻き声を漏らしながらも力を抜こうとしているのだろう、必死に息を整えようとしている。
そうして自分の後孔に差し込んだ指をぐにぐにと動かして慣らしている様をただ黙って見ているというのは、これまで幾度も身体を重ねたが今回が初めてのことだ。
「い゛…っはぁ、んッ」
「…っ」
すぐにでもがっついてしまいたい気持ちを抑えながら、オレは目の前の高尾をただ見つめていた。
じわじわと熱くなっていたモノは既に酷く張りつめているのだが、頭をよぎる高尾の声が手を出そうとする身体にストップをかけるのだ。


今日はオレが全部するから。
そう言い出した高尾の目は揺れていた。
躊躇い、というよりも、懇願なのだろうか。
そんな表情を浮かべたかと思えば、すぐさま準備を整えて、こんなにもオレを煽るのだ。
どうしてこんな状況に陥ったのかと考える頭は、熱くなる身体とは反対にいやに冷静だ。


違和感自体は、そんなことを言い出すよりもっと前。
昼休みに、高尾が一学年上の女生徒に呼び出された後からあった。
高尾の表情がどこか曖昧で、…切なげに見えたのは、オレの気のせいではあるまい。
大方、告白でもされたのだろうと思っていた。
人当たりがよく知名度もある高尾はよくモテるし、告白された回数は片手では足りない。
それは付き合い始めてからも変わらないことだった。
だが、それがなぜ、今回ばかりこんな状況に繋がるのか、まるでわからない。


「真ちゃん、挿れるっ…よ…っ、ん」
オレの上に跨るようにして勃ちあがっているオレのモノを飲み込もうと躍起になっている高尾を見上げる。
「…ふっ、…くっ…ァ」
「っ、く……」
慣らしていたとはいえ滑りが良いとはとても言えないそこは窮屈で、思わず口から呻きが漏れた。
「ァ、っあ…はン…っ…」
太腿を震わせ、喘ぎ声をあげながらゆっくり腰を落としていく高尾は扇情的で、オレはどくりとまた下半身が疼くのを感じる。
頭の中はグルグルと分からない感情が渦巻いているというのに、本当に身体は正直なものだ。
「しんちゃ、…あ、うぁっ」
ごりっ、と掠めたのは前立腺のあたりらしい。
不意に強まった締め付けに息をつめれば、高尾はがくがくと身体を震わせながらもオレの顔を潤んだ目で見つめていた。
「は、しんちゃ…ん…ッ……オレ、きもち…?」
荒い呼吸の中でそう問いかけてきた目は熱をもっているはずなのに、なぜだかやはり寂しげだった。
なぜ、そんな顔でオマエは……。
「っ……」
「ん、しんっ…ふ…ッあ、あっ、あ!」
一瞬、寂しげなままの高尾の表情が泣きそうに歪んだのは、見間違いではなかっただろう。





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