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オマエがいなくなってから、早いものだな、もう10いや…15年になる。
そういえば、再会したのも15年越しだったこと、思い出したのだよ。
残念ながら伝える気はないと書いた言葉は、無事オレに伝わっている。妹に感謝するのだな。

あれから、オレは傍にいてくれる人と出会った。大切な女性だ。
結婚して、子を授かりもしたのだよ。
子どもの名に高尾、オマエの名から1字もらったのは、やはりオレの中でオマエが特別な存在であり続けるからなのだろうな。

高尾。
オマエが残していった言葉は、オレを幸せにしてくれたのだよ。
「幸せ」が何なのか、ずっと考えていた。
結局教えてくれたのはオマエだったのだよ。
オマエが隣にいてくれたあの頃の、温かさ。
温かいとおもうことが、オレにとっての「幸せ」だと。

オレは温かい家庭というものを持てたと思っている。これがお前の言った、幸せになのだろう。
ならば、次はオマエの番なのだよ。
忘れてはいないだろうな。
オレの傍が幸せだと、そう言ったあのときの言葉が嘘でないのなら、待っていてくれ。
ちゃんと高尾の元に行くから。
今度はオレがオマエを幸せにするのだよ。





ったくよ。
何が「オレが死んだらうまく処分してください」だよ、わがまま3回はとっくに無効だっつの!
だいたい後輩の癖に先輩使おうとか何考えてんだ。そんなもんの始末はてめーでつけろって。

バスケットボールの影にこっそり仕込んでやった手紙のことを思い出しながら、一つ舌打ちを零す。
花に囲まれた後輩の姿を見るのは二度目だが、今度ばかりは泣いてやるのは不釣合いだと思うのだ。
だってあいつらは、また並んでいるのだろうから。
ぼんやりと見つめた先の川辺には冬の透き通った青空が映る。
その色が、もう一人の後輩を見送ったあの日に見た空と余りにも似通っていて涙腺が緩みそうになった。

…いってこい、後輩ども!
雫が零れ落ちる前に、放り投げてやった花束はキラキラ光る水面に消えていった。



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天秤〜が行き詰って息抜きで書いたはずが、うっかりどシリアスになって苦しい。
ラスト、宮地さんに登場願ったのは、多分彼が一番黙って二人を見守ってくれそうな人なので。
くっつきもしないしイチャコラもしない、なんちゃって緑高でしたがお許しを。

12.10.13



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テーマ「人外ファンタジー」
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