7



啄ばむような口付けは徐々に深みを増した。
だが、そうして唇を寄せる高尾の手は、緑間のシャツに縋って震えている。
緊張と興奮、でもそれ以上に、やはり後を引いている恐怖からだろう。
高尾が、緑間から再び逃げてしまうことを恐れているのは想像に難くなかった。


ここから先に進もうとすれば、確実に恐怖は蘇るだろう。
その恐怖心が高尾を傷つけるのであれば、急がせるべきではないのだ。
これから先も一緒にいるためには、それもやむをえない。

「…高尾」

離れた唇で緑間が呼ぶと、高尾は咎められた子どものようにびくりと身体を跳ねさせて、躊躇いがちに緑間の顔を見上げた。

「真ちゃん……?」
「無理をしなくてもいいのだよ、高尾」

ゆっくりでいい。焦らなくていい。
今すぐでなくても構わないのだ。
心配しなくても嫌いにはならない。離れるつもりもないのだからと。

そう告げた緑間の言葉に、高尾の目は切なげに歪んだ。


「いやだ…」
「たか…」
「だって!!…オレだって真ちゃんが欲しいんだよ、わかんだろ…っ」

欲しくて、欲しくて堪らない、この気持ちが。


緑間のシャツを握り締めるその手は未だ震えている。

あれだけ怖がっていたのに。
今も、恐れて、怯えているというのに。


「真ちゃんの全部が欲しいんだ……ッ」


潤んだ瞳は緑間が欲しいと必死に訴えかけるのだ。


全部が欲しい。
身体が絶対なわけじゃない。
緑間も高尾も、身体の関係がなくたってお互いが大切で…お互いを愛するだろう。
そんなことは分かりきっている。
分かりきっているけれど、それでも。


「…わかったのだよ高尾」


それでも、お互いはお互いを求めてやまないのだ。


「オレも、高尾がほしい」


その答えに高尾は安堵したように笑った。




back



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -