残像



わかっているんだ。
同じポジションだからだと。
後輩が可愛いからだと。
仕方がないことなんだと。
だけどわかっていてもどうにもならない。

「虎丸、練習付き合ってくれないか」
「はい!!」

…自分が嫌になる。
チームメイト、それも後輩に対してこんなにどす黒い思いを抱く自分が。
何で俺じゃないんだと、一瞬でも思った自分が…嫌だ。

俺の横を豪炎寺と虎丸が通りすぎていく。
豪炎寺を引きとめたかった。
手を伸ばして、抱きついて、俺のものだと言いたかった。
だけど。

…………。

振り払われたら、俺は。
頭を横切っていった記憶。
伸ばした手をはたかれる、あの絶望感。
豪炎寺に…そうされたら。

伸ばしかけた手は、空を切った。




豪炎寺が離れていく。
その考えは何度も何度も頭をよぎって、眠れなかった。
ゴーグルで隠さなければ、寝不足なのはすぐに気づかれてしまうだろう。
「鬼道おはよう!」
「ああ、おはよう」
食堂で朝食を済ませる。
豪炎寺の隣にはやはり虎丸がいて、2人で必殺技について話しているらしい。
ああ、ダメだ。
また変な気持ちになる。
食堂を出るとき、豪炎寺と目が合いそうになって咄嗟に目をそらした。
今、口を開いたら泣いてしまいそうで怖かったから。


「鬼道君、どうしたの?具合悪い?」
ミスが3回連続した所で、吹雪に言われた。
「いや…すまない」
ぐるぐる、ぐるぐる…悪い考えばかりが浮かんできて。
情けない。
「なんか顔色悪いし…休んだ方が」
「鬼道」

後ろから腕を掴まれた。
どくん、と心臓が跳ねる。

「豪炎寺…」
「吹雪、俺が連れて行く」
「そう?じゃあ、よろしく」
豪炎寺と吹雪の会話が耳を通り抜ける。
「いくぞ鬼道」
豪炎寺に腕を引かれるまま足を動かした。
ベンチに行くと思った俺の予想とは裏腹に、豪炎寺が向かったのは建物の裏だった。

「ご…」
「何があった」
俺の声は豪炎寺の声に遮られた。
壁に体を押し付けられる。
「な、にも…」
声が震える。
何でこんな事になってるんだ。
「何故、今朝目をそらした」
「何故今も目を合わせようとしない」
肩に置かれた豪炎寺の手に力がこもる。
「それは…」
豪炎寺が虎丸とばかりいるから。
俺から離れていくと思ったから。
怖くて堪らなくなったから。
泣きそうで、嫌われたくなかったから。
「俺が、嫌いになったか?」
豪炎寺の声は耳に飛び込んできた。
「違う!!」
俯いていた顔を上げる。
「違うんだ豪炎寺っ、俺は…ッ」
涙の膜が張って行くのがわかる。
このままじゃ絶対泣いてしまう、嫌われてしまう。
でも溢れ出した言葉は止まらない。

「豪炎寺が好きでっ、好きで…虎丸に嫉妬して、豪炎寺が…俺から離れていく気がし…」

抱き締められた。
熱いくらい豪炎寺の体温が伝わってきた。
「…ごめんな」
回された腕が頭を撫でる。
「っ豪炎寺…」
好きだ。大好きだ。
ゴーグルが外されて、濡れた目元を豪炎寺の手が拭う。
「鬼道、俺はお前が1番好きだ」
そう言って何度も口付けた。
くちゅくちゅいう音が耳を掠めていく。
ああ、今…豪炎寺は俺だけの豪炎寺だ。
「はぁ…っ、ごーえんじ…」
愛しているぞ。誰よりも。

―――

鬼道さん泣かせる企画第○段←
だって受けを泣かすのが私の趣味\(^q^)/
キス描写上手くなりたい抱き締め描写上手くなりたい
文才が欲しい…

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