それでも時は流れる



黒服の人の列。
1歩、また1歩と前に進む身体。
誰かの啜り泣く声が、耳に入ってくる。
その列の先頭で、俺は笑顔のまま枠に収まった、その遺影を見た。




円堂が、死んだ。

それはあまりにも突然で、あまりにも衝撃的な知らせだった。
信号無視した車が突っ込んで、そのまま。
円堂は逝ってしまったのだ。




通夜からの帰り道、口を開くものはなかった。
否、俺が意識していなかっただけかもしれない。
ただ流れるように時間が過ぎた。
俺は、無意識にいつも通りの自分を演じていた。



靄のかかったような気分のまま、俺は教室にいた。
授業中、もう葬儀は終わったのだろうかと、ふと頭をよぎった。
葬儀。
繰り返される言葉。
円堂が、浮かんでくる。
思考が…とまらない。

「どうした鬼道」
急に立ち上がった俺に教師が尋ねてきた。
「すみません、気分が悪いので…失礼します」
そう言って教室を出た。

どうしようもない思いのまま階段を上がる。
ギィ、と重い音を立てて開いた扉の奥には、綺麗すぎる青空が広がっていた。

ふらふらとフェンスまで歩く。
ゴーグルを外すと、フェンス越しにグラウンドが飛び込んできた。

誰もいないグラウンド。
ゴールを見つめて目が止まる。

あそこにはいつだって円堂がいた。
あそこからは、いつだって円堂の力強い声が聞こえた。
支えてくれる、円堂の姿があった。
だけど。

無人のゴール。
もう、いない。
円堂は帰ってこない。

ずるずるとそのまま座り込んだ。

"俺さ、鬼道が好きだ。"

溢れ出した涙で視界が霞む。

"頼っていい、甘えていいんだ。"

止まらない涙が、コンクリートに落ちていく。

"何があっても、鬼道の傍にいる。"

いない。いない。
どこにも、いない。
あえない。
俺の愛した、円堂守は。
帰ってこない。

「っ…う、っああぁああぁっ!!」

円堂。円堂。円堂。

好きなんだ。大好きだ。愛してる。
本当はお前がいないとダメなんだ。
どんなに強がったって。

お前のいなくなった世界で。
立ち上がることなんかできない。


―――

thx!:恋のお墓

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