導きだした答えは…



泣いた子供がそこにいた。
小さく頼りない体躯を丸めその背を震わせていた。
漏れ出す嗚咽を必死で押さえ込むその姿は見るに堪えない。

何故泣くのかとそっと尋ねた。
けれど心のどこかで子供が何と答えるのか、分かっていた。


さみしい


たった一言。
涙に濡れてぐちゃぐちゃであろう顔を上げぬまま、子供はそう言って泣いた。

嗚呼やはり。
合点がいった。
この子供は私なのだ。

さみしいと泣いた、あの日の私。

ひとは皆ひとり。
ひとりで生き、そしてひとりで死ぬのだ。

幼き日より刷り込まれたそれは、私にとって辛く悲しい事実で。
私は泣いたのだ。

あたたかい場所を知らなかった。
私の手をとってくれるあたたかい手があるなんて、私は知らなかった。

だから逃げた。

知らなくていい。
いつかを恐れるくらいなら、ずっとひとりでいればいい。

矛盾した考えを抱えた私に、ひとは離れていった。

やっぱり私は独りじゃないか。

なんて愚かしい、馬鹿な私。
そうやって、泣いた自分が目の前にいる。
いつかは離れていくじゃない。
また独りになってしまうよ。
さみしいのは、嫌だというのに。


引きずり出されるように、押し寄せてくる思い。

これは過去の私か、それとも今の、未来の私なのか。

私は、ひとりなのか。今、も…?


"三郎、"


この声は雷蔵か?

"僕たち友達だろう?"

"三郎"

"三郎"

"俺達5人は仲間じゃないのか"


兵助、八左…勘。

私は…
「あ、やーっと起きた」

もうすぐ夕食だよ、と続けられた言葉にしぱしぱと瞬きを繰り返す。

「雷蔵、に…なんでお前らまで?」

「委員会ないから遊びに来た」
「居眠りで熟睡する三郎とか珍しいし」
「鉢屋が無防備に寝こけてるのを観察してた」

見れば外は夕焼けだ。
どうやら放課後にうとうとする内に寝てしまったらしい。

「どうかした?三郎」

「いや、何でもない」

顔を覗き込む雷蔵にそう返して立ち上がる。

「じゃあ鉢屋も起きたことだし食堂行こうか」
「おう、飯だ飯だ」
「豆腐つくかなー…」
「兵助ほんとに豆腐ばっかだね」

4人はそう言って歩き出す。

行くよ三郎。

こちらを振り返った4人の濃紺に、口元が緩みそうになるのを堪えて駆け寄った。


私は、ひとりじゃなかった。


―――

三郎は多分1番寂しがりだと思う。それだけ。

thx!:あめあめてんし。



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