仮葉さん

鷹の目の副作用は、試合後に体調不良となってのし掛かってくることが多い。
否応なしに体が重くなって、次第にふらふらと覚束なくなっていく足取りには、さすがの緑間も気になったのだろう。
集団の後ろの方を歩くオレの横でちらちら視線を送ってくる。
そうこう考えるうちにざあざあと耳元で血が流れる音が響き出す。
不意に立ち止まったオレの顔を覗き込む緑間は、不安げで笑えた。
「どうした、やはり体調が悪いのか」
「や…大丈夫…つか、先行っててくんね?」
すぐ行くから、と笑って見せれば緑間はむっとする。
快不快がこんなに顔に出るんだから見てて飽きないよなぁなんて、気をまぎらわすようにどうでもいい事を考えてみても、吹き出す冷や汗は止まってくれない。
正直なところ痩せ我慢も限界だった。
「行っててマジで…」
「…」
暫し沈黙して緑間は先を行く先輩たちの方へ歩いていった。
頭から血が下がっていく感覚がして、その場にゆっくりしゃがみこんだ。
腕で覆った視界の中で目を閉じる。
こんなとこしゃがんでたら誰かに見つかってきゅーきゅーしゃ呼ばれっかもなあ。
早く回復して追い付かないと迷惑かけちまうし。てか今日の試合の反省会あんじゃん…早く行かないと。
はやく、しないと。
思いとは裏腹に一度力が抜けてしまった体は重くて、顔をあげるのも億劫だ。
このまま膝をついてしまったら楽だろうに、そうすれば本当に意識までどこかへ行ってしまいそうでそれも出来やしない。
ああもうほんと…勘弁してくれ。



「高尾」

目を閉じた中で上から声が降ってきた。
…なに戻ってきてんのコイツ。
先に行かせたはずの緑間の声に舌打ちを打ちそうな気持ちで歯を食いしばる。
「っ、から…」
先にいけって言っただろ。
そう言おうと無理やり持ち上げた顔の前に、背中があった。
「は……?」
「乗れ」
困惑するオレに盛大な溜め息をつくと、緑間はオレを体を引き上げてその背に背負う。
何か言おうと開いた口は、体が引き上げられる時のぐわんとした感覚によって塞がれた。
「先輩方に休ませるように言われたのだよ」
だから家まで送る。
そう言う緑間の背中はあまり揺れない。

荷物…重くねーのかな。
体が痛めたらどーすんだよ。
なんで、わざわざお前がオレの世話なんかしてんだよ。
そんなことがグルグル頭を回る。
でも、…くっついた緑間の背中があまりに心地よくて、なんだかすごく眠たくて。

「しん…ちゃん……」
「寝ていろ」
「……ん…」

今日くらい…このまま甘えてしまおうと思った。


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仮葉さんリクエスト「鷹の目副作用ネタ」です。
といいつつ、鷹の目云々をうまいこと入れられず、ただの具合悪い高尾ちゃんになってしまいましたが…すみません。弱らせるのが好きなもので、ついつい。
お楽しみいただければ幸いです。
この度はリクエストありがとうございました。

12.11.05 こよし

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