コノハさん

相応しいとか釣り合うとか、そんなものを決めるのはオレじゃない。
そう理解していたつもりだ。
好きだと愛したいと思うから、オレは緑間を愛してるんだって。
でも…愛されたいと思うから愛してもらえるなんて、そんなの…嘘だ。

「っ、…!」
目を見開いた先にあったのは、暗い天井だった。
体を起こせば汗で体に張り付いた髪と服が、ひやりと皮膚を刺す。
嫌な夢だった。
冷たい目を思い出して背筋が寒くなる。
夢なのだと理解してなお、恐怖を覚えずにいられなかった。
緑間と、別れる夢。
まるで不要になったものを見るような目で、オレをあっさり見限って遠ざかっていく背中。
あまりにもリアルで、残酷なその後ろ姿に惨めにすがろうと手を伸ばすオレ。
震え出しそうになる肩を抱いてオレは体を縮こめる。

「高尾?」
はっとして顔をあげた。
隣で寝ていたはずの緑間と目があってオレは何事もなかったようにへらっと笑う。
「っ、ん…ごめん、起こした?」
「……」
ぬっと伸ばされた手はオレの頬を撫でた。
「な、に…」
「泣いているのか」
「や、見えねーだろメガネ無しで」
実際涙なんて流れちゃいないのに、緑間の手は労るように優しい。
「確かに見えないが…そんな気がしたのだよ」
そう言って起き上がるとオレの体を抱き竦める。
「まったく困った奴なのだよ」
「……っ、」
込み上げそうになる嗚咽に奥歯を噛み締めた。
ぽんぽんとぎこちなく背中を叩く手に、じわじわ視界が滲む。
「あの、さぁ…っ」
要らなくなったら置いていけ。
邪魔になったら捨てていけ。
緑間真太郎は、オレが足を引っ張っていい存在じゃ…ないのだから。
そう言った口は、すぐさま塞がれた。
唇を離すなり緑間はオレの鎖骨あたりに顔を埋める。
「……やめろ」
何もいえなくなったオレに緑間は続ける。
「オマエを好きでいるオレを否定するな」
オレは、オマエといたいからここにいるのだよ。
いらないだの、邪魔だのと、まるで後ろから見ているみたいに。
足を引っ張る?さっきから馬鹿げたことばかり。
「高尾…オマエはオレの、隣にいるのだろう?」
ぼろりと涙が零れ落ちた。
「真ちゃん」
「…何なのだよ」
「真ちゃん…」
「………和成」
隣に、いる。
オレは真ちゃんの、隣にいる。
今度はオレから真ちゃんにキスをした。

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コノハさんリクエスト「別れる夢を見てしまい実力の違いに悩む高尾を緑間が慰める話」です。
高尾ちゃんは放っておくと1人で勝手にマイナス方向に突き進む子だと、うちの真ちゃんは心配しているようです。補足にならない補足です。
リクエストに沿えているのかあやしくなっておりますが、お楽しみいただければ幸いです。
この度はリクエストありがとうございました。

12.11.08 こよし

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