歩んでいくための
「真ちゃぁん」 「何なのだよ」 「買い物付き合って」 夕方特売だから、とエコバッグを差し出せば緑間は、片手を差し出して了解の意を示した。
「日ー長くなったな」 「暦の上ではもう春なのだよ」 「そりゃそーだけどさ、ついこの間まではこの時間もう真っ暗だったじゃん?」 「季節の移り変わりは早いものだ」 「ははっ、なーんか…じじくせぇなオレら」 緑間の顔を見上げて、笑う。
3年。 一緒に過ごした高校時代を更に早送りするかのような速度で、この3年は過ぎていった。 緑間と一緒に暮らしを始めて4度目の春が、来る。
「何を買うつもりなのだよ?」 「とりあえず…特売のメカブと油揚げと卵買って、あーあと歯磨き粉覚えといて」 「ふむ」
春が、やって来る。
「晩飯はウチに豆腐と挽き肉あったからマーボー豆腐な」 「…辛味は加減しろ」 「わーかってんよ、何べんも作ってんだから真ちゃんの好みぐらい完璧だっての」
オレたちは。
「ああそうだ、真ちゃん」 「なんだ」 「…おしるこも、買おうぜ」
いつまでこのままでいられるんだろう。
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こんな感じに始まる緑間と高尾の出発の物語。 緑間と高尾が離れていくための話。 大学4年生になった2人が少しずつ距離をとろうとしたり、失敗したり、突き放したり、触れてみたり。 お互いを分かりすぎるが故の葛藤だらけの物語。 ポイントなのは2人が付き合ってないところだと思うんだ。 …書きたいし読みたいけど書ける気がまるでしない。
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